年明け早々、衝撃的なニュースです
ベネズエラのカラカス未明の爆発、火柱各地に
昨年末からトランプ政権はベネズエラに対し
「海上封鎖」
「マドゥロ政権を外国テロ組織に指定」
「大規模艦隊で完全包囲」
を行っていましたが、ここまで踏み込むとは
さすがに想定外でした
麻薬問題は上辺の理由で、真の目的は
石油利権の確保だという指摘もあります
南米はアメリカの裏庭という考え方は
ロシアのCIS諸国に対する認識と似ています
地域が不安定化し、市民の生活が脅かされる
ことのないよう切に望みます
以下、Yahoo! JAPANニュース
ジャーナリスト中岡望氏の記事からの引用です;
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■国家主権と国際法を無視する行為
トランプ大統領のやり方は乱暴である。米国内で起訴されているとは言え、海外に居住する人物を、軍隊と法執行機関の担当者が国境を超え、逮捕するとい行為は、その国の国家主権を踏みにじるものである。しかも、その人物が大統領となれば、どう抗弁しても国際法上、許されることではない。まるで南米の麻薬マフィアと戦うアメリカ映画そのままの物語である。
ベネズエラ国防相のウラディミール・パドリーノ・ロペス将軍は、今回の行動を「侵略」であり「露骨な暴挙」だと非難している。次期政権トップとなる立場のデルシー・ロドリゲス副大統領は、マドゥロ大統領と妻の所在を把握していないと述べ、「トランプ大統領と米国政府に対し、マドゥロ大統領および大統領夫人の即時の生存証明を提示するよう要求する」と声明を発表している。またベネズエラ通信省は、マドゥロ大統領に対する攻撃を受け、「非常事態宣言」を発令する声明を出していた。その声明には米国の軍事行動を「拒否し、糾弾し、非難する」と書かれている。
■多くの共和党議員はトランプ大統領を称賛
今回の作戦に関して、米国内で反響が広がっている。多くの共和党議員は作戦を指示する発言を行っている。フロリダ州選出のサラサール共和党下院議員は『X』に「今夜、新たな自由の叫びが半球全体に響き渡っている。力強く、明確で、止めることはできない。自由万歳!(¡Viva la libertad!)」と書いている。
また多くの南米からの亡命者を受け入れているフロリダ州選出のヒメネス下院議員は「ベネズエラ人、キューバ人、ニカラグア人の亡命者の大多数が暮らすフロリダにとって、今日は大きな日だ。これは私が代表するコミュニティであり、私たちは感情と希望で胸がいっぱいだ。この見事な軍事作戦を成し遂げたトランプ大統領と、勇敢な米軍の将兵たちに永遠の感謝を捧げる」と書いている。
同じくフロリダ州選出のバラート下院議員は「これこそが真に決断力ある指導力の姿だ。わが国は、非合法なマドゥロ政権から前例のない国家安全保障上の脅威に直面してきた。長年にわたり抑止されることなく、マドゥロは麻薬を米国に送り込み、数え切れないほどの米国人を死に追いやり、無実の米国人を拉致し、トレン・デ・アラグアやカルテル・デ・ロス・ソレスといった暴力的なカルテルの構成員を米国内に流入させ、地域の安全保障を不安定化させてきた。この政権はまた、イラン、中国、ロシア、キューバ、ヒズボラ、ハマスといった米国の敵とも同盟関係を結んできた。こうした行動を放置し続けることは、きわめて無責任であり、わが国の安全を危険にさらすものだ。他の者たちが逡巡する中、トランプ大統領はこの脅威を正しく認識し、断固として行動した。すべての米国民は、トランプ大統領、ルビオ国務長官、ヘグセス国防長官、そして英雄的な米軍に感謝すべきだ」と、手放しで賞賛している。
■議会の承認のない行動は憲法違反と批判する民主党議員
今回の作戦を批判する声もある。民主党のモールトン下院議員は、トランプ政権が夜間に行ったベネズエラでの行動について、「マドゥロ大統領を拘束するための適切な権限がなく、米国人に対する差し迫った脅威も存在しなかった」として厳しく非難した。同議員は「議会はこの戦争を承認していない。ベネズエラは米国に対して差し迫った脅威ではない。これは、将来の計画もないまま米国人の命を危険にさらす、無謀で選択的な体制転換(イラク2.0)だ。戦争の代償は“戦利品”よりはるかに大きい」と批判している。
同じく民主党のガジェゴ上院議員は、ベネズエラでのトランプ大統領の作戦を非難し、『X』への投稿で「米国は間違っている」と指摘している。同議員は「私はイラク戦争の中でも最も過酷な戦闘の幾つかに参加した。仲間が命を落とすのを見たし、正当化されない戦争のために民間人が巻き添えになるのも目の当たりにした。結果がどうであれ、ベネズエラでこの戦争を始めたこと自体が、私たちの過ちだ」と指摘している。
民主党のシュルツ下院議員は「なぜ議会と米国民がこの作戦から排除されたのか、その理由を私は追及する。事前に議会が関与しなかったことは、非合法なベネズエラ政権が継続する危険性をはらんでいる。議会は正しく情報を与えられ、この侵攻について公聴会を開かなければならない」と、議会の承認を得ずに軍事行動を取ったことを批判した。クラーク下院議員も「トランプ政権は議会の承認もなく、結果への配慮もないまま、主権国家に対する大規模な軍事攻撃を開始し、その現職大統領を拉致した。この侵略行為は違憲で、非米国的であり、民主主義への直接的脅威だ」と厳しい論調でトランプ大統領を批判した。
イラク戦争に従軍した経験のある民主党のガレゴ上院議員も「米国がベネズエラと戦争をする正当な理由はない。私は国民に嘘を売り込んで始められた違法な戦争の結果を実体験として知っている。私たちは、同じ過ちを繰り返さないと誓ったはずだ。しかし、また同じことが起きている」と、今回の軍事行動がベネズエラへの内政干渉、さらに体制転換を目指す懸念を指摘している。
元軍人の民主党のビンドマン下院議員は「はっきり言っておく。トランプ大統領は、議会の承認なしに、そして憲法に違反して、ベネズエラで戦争を始めた。過去20年間、戦争は始めるのは容易だが、終わらせるのは困難だということを私たちは痛いほど学んできた。計画は最初の接触で崩れることが多い。私はイラクでそれを目の当たりにした。トランプは間違っている。ベネズエラで戦争を始めるべきではない。それは米国民が望んでいることではなく、アメリカ・ファーストでもなく、米国の血と財産を費やす価値はない」と、事態が拡大する懸念があると指摘している。
■永続的なベネズエラの支配を目指すトランプ大統領
ルビオ国務長官は、今回の作戦はマドゥロ大統領の逮捕が目的であり、それ以上、ベネズエラに干渉する気はないと語っていた。しかし、1月3日、トランプ大統領はフロリダ州の私邸マール・ア・ラーゴで演説をし、「我々は、安全で、適切かつ慎重な移行を実現できる時まで、この国(ベネズエラア)を運営する。慎重でなければならない。それが我々の理念だからだ。我々は、ベネズエラの偉大な人々に、平和、自由、そして正義を望んでいる。国民の利益を考えない別の人物が権力を握るような事態を、我々は容認できない。そんなことは起こさせない。我々は、適切な移行が実現するまで、この地に留まるつもりだ」と語った。
アフガニスタンやイラクで失敗した「体制転換」を、ベネズエラで再び目指すようだ。問題は単に“麻薬犯罪者”を逮捕した次元に留まらない可能性がある。トランプ政権は11月に発表した「国家安全保障戦略」で南米での米国の支配権の確立を指摘している。ベトナムやアフガニスタン、イラクでの教訓はトランプ大統領にはないようだ。
■『New York Times』の「社説」が指摘する問題
『New York Times』が「社説」で、今回の軍事作戦の問題点を明らかにしている(1月3日、Donald Trump’s Attack on Venezuela Is Illegal and Unwise)。
「マドゥロ氏に同情する人はほとんどいないだろう。彼は非民主的で抑圧的な指導者であり、近年、西半球を不安定化させてきた。国連は最近、10年以上にわたる殺害、拷問、性的暴力、恣意的拘束が、彼の手先によって政治的反対派に対して行われてきたことを詳述する報告書を発表した。彼は昨年の大統領選挙を盗み、さらに約800万人に及ぶ移民の流出を引き起こし、地域全体に経済的・政治的混乱をもたらした」と、マドゥロ大統領の問題点を指摘しながらも、「過去100年の米国外交から得られる最も重要な教訓があるとすれば、それはどれほど忌まわしい政権であっても、排除を試みることが事態を悪化させる可能性が高いということだ」と、トランプ政権の誤りを指摘している。
「トランプ氏はいまだ、ベネズエラでの行動について首尾一貫した説明を示していない。正当な理由もなく、米国を国際的危機へと押しやっている。もしトランプ氏が正当性を主張したいのであれば、憲法は彼が取るべき道を明確に示している。議会に諮ることだ。議会の承認なしに行われた彼の行動は、米国法に違反している」。さらにトランプ大統領の主張に根拠がないと指摘している。「歴史上、各国政府は敵対国の指導者をテロリストと呼び、軍事侵攻を警察行動として正当化してきた。この主張は、今回の場合、特に馬鹿げている。ベネズエラは、近年米国で蔓延しているフェンタニルや他の薬物の主要生産国ではなく、同国で生産されるコカインの多くは欧州へ流れている」。
さらに、今回の行動の背後にある理由として、「より説得力のある説明は、最近公表されたトランプ政権の『国家安全保障戦略』にあるかもしれない。そこでは、中南米を支配する権利が主張されている。『長年の放置の後、米国はモンロー主義を再主張・執行し、西半球における米国の優位を回復する』と記されている。ベネズエラは、この新たな帝国主義の最初の対象となったようだが、それは危険かつ違法な世界観である」と、トランプ政権の本音を明らかにしている。そして「トランプ氏には、ベネズエラ攻撃を正当化する法的根拠が一片たりともない」と、極めて厳しい口調で断定している。
そして「想定される最悪の結果には、ベネズエラ西部に拠点を持つコロンビア左翼武装組織ELNの暴力拡大や、マドゥロ政権下で活動してきた準軍事組織コレクティーボによる混乱が含まれる。さらなる不安定化は、エネルギーや食料市場を揺るがし、移民流出を加速させるだろう。トランプ氏の軍事的冒険主義が、ベネズエラ国民の苦しみを増し、地域の不安定化を招き、米国の国際的利益に長期的な損害を与えることを強く懸念している。トランプ氏の好戦的行動は、明白に法を踏みにじっている」と、警鐘を鳴らしている。
■冷酷なトランプ政権の姿
筆者はトランプ大統領の政策をフォローしている。いかにトランプ大統領が理念もなく、歴史を知らず、倫理性に欠けるかを見てきた。たとえばウクライナ戦争では、気分次第でゼレンスキー大統領に対する態度が変わるし、ウクライナ政策が変わる。ウクライナ戦争の歴史的な意味など眼中にない。トランプ大統領にとって大切なのは、あるいは判断基準は、良い意味で「アメリカの利益になるかどうか」、悪い意味で「トランプのファミリー・ビジネスに得になるかどうか」である。マドゥロ大統領が指摘するように、トランプ大統領はベネズエラの豊富な石油資源を支配することが本当の狙いかもしれない。
またトランプ政権は「冷酷」かつ「残酷」である。ベネズエラから小さな船が出航する。それが麻薬を密輸する船かどうか分からない。通常であれば、船に立ち入り、捜査し、容疑があれば逮捕し、裁判に掛ける。それが「法治国の原則」である。だが、8月以降、トランプ政権のやってきたことは、容疑を確認することもなく、空からの攻撃で小さな容疑のある船を沈める。生き残って沈みゆく船にしがみ付いている人に対して、戦闘機から再び攻撃し、殺害する。それを国防長官が指示していたのである。ベネズエラ問題は、トランプ政権の本質を問う出来事であり、終焉の始まりかもしれない。

