神経の無い人、神経の太い人(3) フトシさんとは?
前回、前々回と神経の無い人ナシオさんについて書きました。
そして、今回、ナシオさんの悲劇を起こさないためにはどのようなことが考えられるのか、
解説するつもりでしたが、それはいずれかのタイミングにしましょう。
(この辺の自由度がフロクならではですね。)
今回は神経の太い人について。
前回までで神経の無い人がどんな人かおわかりいただけたでしょう。
(どうですか?ブログの皆さんの周辺にもいらっしゃいませんか?)
神経の太いタイプのハイパフォーマーは有機的な組織の中で育まれることが
多いように思います。
さて、今回はフトシさんの登場です。
架空の人物フトシさんを通じて、神経の太い人がどんな人か見ていきましょう。
フトシさんが選んだ就職先は中堅の商事会社。
商社マンというものへの漠然とした憧れと、何といっても、OB訪問や選考で出会った
先輩たちの魅力に惚れ込んで入社を決意しました。
商事会社といっても、この会社はエレクトロニクス・IT分野の機器(つまり、ハコモノ)販売に
強みがあります。
ただ、単純にハコモノだけが売れる時代ではありませんから、
それに付加価値としてのソフトウェアを乗せたり、
トータルのシステムとして仕立てて顧客に対して提供します。
フトシさんが配属されたのはこの会社の花形部門といわれるIT事業部門。
そこで、ルーターなどの機器を販売する課に席を置くことになりました。
当然、こうした機器類についての知識があるわけではありませんから、
配属当初は何事も勉強ということで、先輩社員の丁稚のような仕事をしながら、
すこしづつ知識を付けていきました。
そんな丁稚期間でありながら、フトシさんは少しづつ「神経の太さ」を見せていきます。
IT事業部門に配属された新人たちには、ITについての知識強化を目的に、
毎週、課題図書が与えられます。
その課題図書に対する自分なりの考えをまとめてレポートとして提出するという
かなり面倒な育成プログラムが動いていました。
はじめのうちはまじめに取り組んでいたフトシさんでしたが、持ち前の勘と要領の良さを発揮して、
ある時から、インターネット上に掲出されている課題図書の書評を見つけ出しては、
それをカットペーストして提出するようになります。
毎週末、休日を返上してレポート作成している同期たちを横目に
フトシさんはネット上で検索して、適当にカットペーストするだけ。
やがて、課題図書を読むことすらしなくなります。
「レポート提出が大変だ」と嘆く同期社員たちに対して
「お前ら馬鹿だな。誰があんなレポート読んでると思ってんだよ。
誰も読まずに捨ててるだけに決まってるだろ。適当に書いとけばいいんだよ。」
などと暴言を吐きます。
この暴言をまじめな同期社員が上司にチクリます。
やがて、本部長の耳に入り、フトシさんはこっぴどくお目玉を食らうのですが、
「書籍なんて読むよりもネット上で学ぶことのほうが多いですよ。
くそまじめにレポート提出するよりも、僕みたいに工夫する人間のほうが
これからの競争の中で生き抜けると思いませんか」
などと、ふてぶてしい言い訳をいうのですが、これがなぜか本部長を妙に納得させてしまいます。
「いい加減に見えるけど意外としっかり考えている奴」とか、
「普通の人間が考え付かないことをやりそう」とか、
フトシさんに対してそんな風評が少しづつ流れていきます。
とりわけ、本部長からは「新人だが、物怖じせず、おかしいものはおかしいといえる骨のある男」などと
何でもずけずけ言っているだけなのに、フトシさんは一目置かれ始めます。
(組織の上位者というのは、ずけずけ言われることに慣れていないので、かえって新鮮に思ったりします。)
実際には、神経の太いフトシさんとしては「適当にやり過ごしているだけ」なのに、
周囲が勝手にそれを「新しい発想」とか「組織におもねていない」とか好意的に受け取ってくれます。
しまいには、「あいつは白鳥のように、見えない水面下で足ひれを動かしている。
人が見てないところですごい努力をしているんだ。」などと良き誤解まで出始めます。
そんな状況がますますフトシさんの”図太さ”を増長させていきます。
適当で努力もあまりしないフトシさんですが、自分が興味を持った事柄には熱心に取り組みます。
レポート逃れのために培ったインターネット活用の力量が思わぬ展開を生み出します。
ITのハコモノ商材を逆オークションするサイトを考え付きました。
このアイデアを本部長に直接ぶつけると「面白い!やってみろ!」と即決。
早速、小所帯ながら専門チームが組成され、フトシさんはプロジェクト責任者に任命されました。
逆オークションサイトがほとんど無い時代であったために、これがヒット。
この成功がきっかけとなって、フトシさんはますます社内で有望視されます。
その一方で、
「懸命に努力するなんて馬鹿だ。仕事はせいぜい80%の能力発揮で十分。
俺みたいに才能のある人間は人生を謳歌すべきなんだ。」
という人生エンジョイを標榜するフトシさんは会社にもエンジョイを持ち込みます。
逆オークションサイトで初めて受注が入った時の打ち上げでは、
会社の予算を大幅に上回る費用を使ってドンチャン騒ぎ。
本部長の助け舟で費用は全額会社持ちにしてもらいましたが、
始末書を提出することに。
また、自分のチームだけ勝手に「服装自由」にしたり、
デスクのプライバシー環境を高めると称して勝手にパテーションを発注したり、
やりたい放題です。
その度に始末書提出でやり過ごすのですが、その始末書も始末書作成サイトで適当に作る始末。
一事が万事、なめきった態度でやり過ごしていきます。
そんな順風満帆に見えるフトシさんの会社人生ですが、
あることがきっかけで暗雲が立ち込めます。
この続きは次回にさせてください。