前回のブログの続きになりますが、
クリスマスイブの夜、映画「ミスター・アーサー」を観ました。

やっぱりこの映画、面白い。
ただ、正直に言うと、映画の内容以上に強烈な印象を残すのが、
クリストファー・クロスの「ニューヨーク・シティ・セレナーデ」です。



何度聴いても思います。
これは名曲中の名曲。

今は夜中の2時。
日本中で、たくさんのサンタさんが
子供たちの枕元にそっとプレゼントを置いている、そんな時間帯です。

そんな聖なる夜に、
なぜか自分の元に舞い込んできたのが――
藤原真人/ニューヨーク・シティ・セレナーデという、謎のレコードでした。



これまで何度もこの曲を検索してきたのに、
藤原真人がカバーしているレコードジャケットに遭遇したのは、今回が初めて。

これはもう、
音楽好きにしか分からない“音的な啓示”のようなもので、
そうそう体感できるものじゃありません。

一度これに出会ってしまうと、
思考はすべて
「藤原真人のニューヨーク・シティ・セレナーデ」
に支配されてしまいます。

まずはYouTubeで検索。
たいていは、ここで曲を聴いて満足するのですが、
今回は……ない。

次に、ヤフオクやメルカリで格安盤を探す。
なければ、Amazon、Discogsもチェック。

ところが今回は、
過去の販売履歴はあるのに、すべてソールドアウト。

この「ソールドアウト」、ヤバいですね。
もう、入手したい衝動が止まらなくなってきます。

そして最後に辿り着いたのが、BASE。
ついに販売中の商品を発見――
しかし、価格は1,500円オーバー。

ヤフオクやメルカリで、
数百円で売られていた過去を知っているだけに、
ここでまた悩みがひとつ増えるわけです。

今夜は久しぶりに
クリストファー・クロスの「Another Page」を流しながら、
この謎盤のことを考えつつ、
悩み多き聖なる夜を過ごしてみたいと思います。

音楽好きにとっては、
最高のクリスマスプレゼントになった気がする。
今日はクリスマスイブ。

せっかくなら、何か一本映画を観てやろうと思った。

頭に浮かぶのは定番中の定番。
ホーム・アローン、ダイ・ハード。
いや、悪くない。むしろ名作だ。
でも今日は、そこに行く気分じゃない。

じゃあ少し外して、三人のゴースト?
あるいは大災難PTA?
どれも間違いではないけれど、なぜか決め手に欠ける。





そんな時、ふと思い出したのが
ミスター・アーサーだった。




そういえばこれ、クリスマス映画じゃなかったっけ?
そう思って調べてみたら、全く関係なかった。
舞台はニューヨーク、公開は本国では8月。
クリスマス要素は、驚くほど存在しない。

じゃあ、なぜ自分の中では
「クリスマス映画」という記憶になっていたのか。

答えは簡単で、日本公開が12月だったからだ。
あの頃は、冬に観た映画は、冬の映画として心に残る。
季節と映画の記憶は、思っている以上に強く結びついている。

冬のニューヨーク。
少し冷たい夜の空気。
ビルの谷間に灯る明かり。

そこに流れる
ニューヨーク・シティ・セレナーデ。



この曲を初めて聴いた季節が、
たまたま12月だった。
それだけで、この映画は
自分の中で「クリスマスの引き出し」に入ってしまったのだと思う。

華やかなツリーも、家族団らんも出てこない。
でも、なぜかこの時期になると観たくなる。
それはきっと、
この映画が「誰かと過ごすクリスマス」ではなく、
「ひとりで過ごす夜のクリスマス」に寄り添うからだ。

派手さはない。
でも、静かに大人の時間を許してくれる。

今夜、照明を少し落として、
あの曲が流れるのを待つ。
それだけで十分だ。

……というわけで、
クリスマスだから、少し気取ってみた。



明日はクリスマスイブ。
この時期になると、街でもラジオでも、いわゆる定番のクリスマスソングを耳にする機会が増えます。

そこで、質問です。
「サザンのクリスマスソングって何?」

多くの人は、
「白い恋人たち」
「メリークリスマス・イン・サマー」
と答えると思います。

ただ、ここには少しだけ注意点があります。

この2曲は、
サザンオールスターズ名義の楽曲ではありません。

「白い恋人たち」は桑田佳祐のソロ曲。
「メリークリスマス・イン・サマー」は桑田バンドの楽曲です。

ここで一拍置いて、
「じゃあ、サザン名義のクリスマスソングは?」
と聞かれたときに、すぐ答えられる人は、かなりのサザン通だと思います。


サザン名義のクリスマスソング

答えは、この2曲。

・クリスマス・ラブ
・CHRISTMAS TIME FOREVER

どちらも、いわゆる特大ヒットという位置づけではありません。
ただし、クリスマスソングとしての完成度は極めて高い。

そして、この2曲は立ち位置が明確に違います。

「クリスマス・ラブ」はシングル。
一方、「CHRISTMAS TIME FOREVER」は
アルバム「世に万葉の花が咲くなり」の収録曲です。



ここが、とてもサザンらしい。


あえて「季節商品」にしなかったという選択

「世に万葉の花が咲くなり」のリリースは、9月中旬。
クリスマスには、まだ早い時期です。

普通に考えれば、
「CHRISTMAS TIME FOREVER」というタイトルの曲があるなら、

11〜12月に
クリスマス向けのシングルとして
別枠でリリースする

そういう判断があっても、何の不思議もありません。
むしろ、ビジネス的にはそのほうが自然です。

でも、サザンはそうしなかった。

この曲を
クリスマス時期に向けた「商品」として切り離さず、
あえてアルバムの一曲として収録した。

ここに、
サザンオールスターズというバンドの美学が
はっきり表れている気がします。


クリスマスを「人生の中」に戻す感覚

サザンにとって、クリスマスは
特別な日ではあっても、
特別扱いするためのイベントではなかったのかもしれません。

夏があり、
秋があり、
その延長線上に、静かにやってくるクリスマス。

だからこそ、
9月発売のアルバムの中に、
何事もなかったかのように
「CHRISTMAS TIME FOREVER」が置かれている。

これは、
クリスマスを切り取らず、
人生の流れの中に戻すという感覚
なのだと思います。


シングルとしての「クリスマス・ラブ」

一方で、「クリスマス・ラブ」はシングルとして世に出た曲です。
そして、何より印象に残るのが、あのジャケット。



雪景色の中の、どこか心許ないあばら家。
その上空に浮かぶ、正体不明のUFO。

恋人もいない。
笑顔もない。
クリスマスらしい「説明」もない。

それでも、
「何かが起こるかもしれない」気配だけは、確かにある。

もしかしたら、
あのあばら家は馬小屋のような場所で、
そこで何かが生まれようとしているのかもしれない。

UFOは、
ベツレヘムの星のような存在なのかもしれない。

答えは用意されていません。
だからこそ、想像が広がる。


サザンのクリスマスが、今も残る理由

シングルで象徴を突きつける
「クリスマス・ラブ」。

アルバムの流れの中で、
静かに染み込ませる
「CHRISTMAS TIME FOREVER」。

別枠で出してもおかしくないのに、あえてそうしない。
その選択にこそ、サザンの美学がある。

派手じゃない。
分かりやすくもない。
でも、毎年この時期になると、ちゃんと思い出してしまう。

サザンオールスターズのクリスマスソングは、
そういう形で、今も生き続けているのだと思います。

ちなみに、もう一つサザンらしさを感じさせる小ネタがあります。

「クリスマス・ラブ」のカップリング曲は、
なんと「ゆけ!!力道山」。

クリスマスソングのシングルに、
このタイトル、この内容の曲を平然と組み合わせてくる。
普通なら「空気を読め」と言われかねない選択です。

でも、サザンはそれをやってしまう。
しかも、違和感がない。

むしろ、
「だからサザンなんだよな」
と納得してしまうのが不思議なところです。

季節感やムードを揃えることよりも、
作品としての面白さやバランスを優先する。

クリスマスだからといって、
すべてを“クリスマス色”に染めない。
ここにも、サザンオールスターズの美学がはっきりと表れています。

シリアスとユーモア。
ロマンとバカバカしさ。
高尚さと大衆性。

その全部を同じシングルの中に同居させてしまう感覚。
改めて考えると、やっぱり只者じゃないバンドです。