円高と海外旅行(武蔵中 2019) | 中学受験入試標準問題集 今日の1問

中学受験入試標準問題集 今日の1問

標準的な中学入試問題の解法について取り扱います

本日は、海外旅行に関する問題を扱います。

今年は、新型コロナの蔓延で、海外旅行が困難な状況になりました。この状況が今後どうなっていくのかは不透明ですが、以前のように気楽に海外旅行できるようになるのはまだ時間がかかりそうです。

さて、今回の問題は、その海外旅行、日本国民にとって身近なものになったのはどうしてか、それを探るものになります。現代史は複雑な話が多く、苦手意識のある人が少なくありませんが、最難関校で歴史が出題されるときには高確率で問われるものでもあります。頑張って乗り切っていきましょう。

 

問題

第二次世界大戦後の日本からの出国者数は,1970年代以降にそれまで以上のペースで増加するようになりました。それはなぜか、考えられる理由を1つあげ、簡単に説明しなさい。

 

 

解説

戦後、急激な経済成長や先進国クラブといわれるOECDへの加盟、国内旅行の盛り上がりにもかかわらず、日本国民のほとんどの人は海外旅行に行くことができませんでした。

それは、ドルに対して円が弱く、海外旅行をするのに十分なドルを手に入れることが難しかったからです。そして、円とドルのレート(交換比率)も固定されていました(固定相場制)ので、ドルが安くなるということもなく、なかなか気軽に海外旅行できる環境は整いませんでした。

 ところが、1971年、アメリカのニクソン大統領がドルの過大評価によるアメリカ経済へのダメージを理由に、ドルの固定相場制から、変動相場制(状況に応じて、円とドルの交換比率が変化する)への移行を宣言(ニクソン・ショック)しました。その後、1ドル360円で固定されていたものが、ニクソン・ショックのあった年の年末には1ドル320円程度まで下落し、その後、いったんは固定相場制にもどりました(スミソニアン協定 1ドル308円)が、スミソニアン協定が終結して、変動相場制が復活した1973年以降、日本経済の成長と歩調を合わせるようにドルは円に対して値下がりを続けました(円高)。その結果、多くの日本国民が十分なドルを手に入れて海外旅行に行けるようになりました。

 

解答例

1970年代に固定相場制が終了したことから、円高が進み、日本から海外旅行に行きやすくなったから。

 

補足 その1

円高は日本からの海外旅行者にとって有利、円安は日本からの輸出業者にとって有利、ということを抑えておきましょう。

 

補足 その2

ニクソン・ショックは、上記の為替に関するものと、中華人民共和国との電撃的な国交樹立に関するものの2つがあります。

中学受験でニクソン・ショックというと、後者のものを指すことが多いので、注意してください。