前回までのあらすじ:
本田承太郎は藤堂物産で働くサラリーマン。
本田の同僚である片岡の話だと
藤森部長は以前の会社でトラブルを
起こしてこの会社に入社し
現在の部署でも横暴な振る舞いを
している事が解りました。
第204話:領収書を発行して貰う事
本田承太郎の部署の部長、
藤森部長の裏の顔が明らかに
なってきました。
片岡の見立てでは本田の部下
山本を退職に追い込む為に
大橋という末端社員を使って
ワザと不正を仕組んだと言うのです。
しかし本田には
腑に落ちない点がありました。
本田
「だいたい何で山本をクビに
する必要があるんだ?
その人選の意味が解らないな」
片岡
「お前に直接手を下すのは
周囲の反発や抜け目の無さから
難しいと判断したからだろう」
「それにしても社員を一人
クビにするのはそれなりの
労力が必要だと思うが・・・」
「他にも理由があると?」
「もう少し探ってみてくれないか」
本田は藤森部長が
自分の権力をアピールする為だけに
山本を退職させたとはこの時
何故か素直には思えなかったので
片岡に探って貰う事にしたのです。
そして、
藤森部長の
もう一つの疑惑に関しては
片岡から事情を聞く事が出来ました。
その疑惑は藤森部長が前の会社を
退職する事になった「きっかけ」
についてです。
片岡は藤森部長の前職が
外食産業(飲食事業)と言う事を
知っていました。
その前職の会社を調べると
自社で取引しているルートと
同じ業者を扱っている部署が
あったので、
そのツテから同社と関係を持って
情報を得たそうです。
片岡がどうやって詳細な情報を
入手したのかは不明ですが
もはや産業スパイの様に明確な
内部情報を語ったのでした。
その内容では
藤森は噂通り「横領」を行っていて
その事が会社にバて辞める事に
なったという事です。
その手法は比較的巧妙ですが
その会社の態勢が甘く
社員が不正を行える環境にある事や
監査が無い事の方が問題です。
まず、取引先の取引を決める際の
接待を受けています。
これは普通に行われ
こういう業界では違法でも無い
通常の接待です。
そこから互いに頼みごとを出来る
関係づくりが構築されます。
藤森の場合その接待を行った
取引業者から定期的に購入する
という約束をする代わりに
自社に良い品物を仕入れる為の
販売促進費を使わせて欲しいと
言うものでした。
少し複雑な説明になりますが
詳細はこうです。
例えば、
藤森が飲食店を取り仕切る立場で
野菜を仕入れる業者を決める場合
八百屋は自分の店で購入契約を
取って欲しいので藤森を
接待します。
その際に藤森は
一つ条件を出します。
それは
良い野菜を仕入れる為の
販売促進費と称して
領収書を発行して貰う事でした。
八百屋で仕入れた野菜で
状態の良い物だけを入荷する
権利など理由付けは
何でも良いのですが
要するに架空の領収書を
切って欲しいと頼んだのです。
八百屋は自分の店で
一つの企業から専属で契約が
取れて複数店舗なら
年間で何千万もの収益が
見込めるので是非とも欲しい
取引先なので
手書きで領収書を発行する位
罪悪感なく承諾してしまう
というケースだったのです。
架空の領収書と言う事は
藤森の会社からお金を出して
その八百屋に支払う
形になりますが
実際は払われず宙に浮きます。
その金を藤森が横領して
自社には領収書を提出する
という手法です。
支払った対価が実物では無く、
「鮮度の高い野菜の優先権」
の様に不明確な物の値段なので
バレても八百屋が口を
割らなければ
何の証拠も出てこないのです。
実際は藤森の部下がお店を
切り盛りして管理しているので
その店の取引で藤森が不正を
行ったとしても
その店の店長には解らないので
発覚しなかったそうです。
本田
「じゃあ結局なんで
この話が表に出て藤森は
会社を追われる事になったんだ?」
片岡は更に話を続けます。
つづく