前回までのあらすじ:
本田承太郎は藤堂物産で働くサラリーマン。
本田は別の部署の一つ下の後輩
富永と言う男と会っていました。
第184話:前提になるテクニック
富永と言う男は他人の事を大げさに
悪く言う節があります。
富永
「営業部署の佐々野は頭悪いから
これを失敗して最悪のカスみたいな
ヤツなんですよ~」
という調子で必要以上に中傷を
会話に入れてきます。
口癖は
「死ねばいいのに」
そんな富永は本田にはよく
会いに来ていて社内でも数少ない
まともに会話が出来る存在でした。
今回も本田と話す時に
同期や同じ部署の人間を非難して
悪口を言っていました。
本田がいつも注意しても
富永は聞かないので今回は本田も
少し話しに乗ってみる事に
していました。
本田
「そうか、それはあいつも
悪いかもしれないな。」
本田がそう言って富永に同調すると
富永の表情も目がギラつき
一気に話を盛り上げてたたみ掛けて
話していきました。
そしてその場は終わったのですが
数日たったある日、
本田は先輩の高城からこんな事を
質問されました。
高城
「本田、お前○○と仲が険悪で
あいつの事を悪く振れ回って
言っているらしいな?
あいつが何かやったのか?」
始めは本田も何の話か
解りませんでしたがどうやら
富永が本田の事を噂で
流していたようです。
高城先輩の話しから察するに
本田と富永の話に挙がった佐々野が
ミスをした件で富永の悪口に
本田が同調した事により
富永が周囲の人間に
二人が険悪で本田が悪く
言っていると振れ回ったようです。
本田はどういう事かすぐに
察しがつきました。
本田
「高城さん、パワハラとかの
問題になっているんですか?」
高城
「お前がそんな事をするなんて
考えられないが本当なのか?」
「いいえ、佐々野君はほぼ面識は
無いですし事実無根ですよ」
「やはりか…
あまり良い噂は聞かないが
何であいつはああいう性格なんだ」
「性格ではありませんよ」
本田は富永の行動に対し先輩の
高城にこの様に説明しました。
富永の入社当時を知っている本田は
元々そんな性格では無かった事を
知っていました。
富永が行っていたのは人と
話をする中で周囲の悪口を大げさに
言う事で相手からも乗ってくる
話を引き出していたのです。
つまり、
情報を引き出す手段として
かなり大げさな悪口を使って
いたのでした。
手法としては、
こういった流れになります。
A君と富永が話す場合
↓
A君の周りの人間の悪口を言う
↓
いくつか話して
A君が乗ってくる話を探す
↓
乗ってくる話を盛り上げる
↓
情報を得る
前提になるテクニックですが
人の心理としてまず、
「他人の悪口は聞きたい」
という心理を突きます。
人は自分以外の身近な人間が
悪口を言われている時は
つい話を集中して
聞いてしまいます。
それで気分が悪くなるか
楽しくなるかは話の内容と
その人との関係性にもよりますが
集中して話を聞くと言う事は
「興味がある状態」という
態勢が作られるのです。
この、
話を聞いて貰える態勢が
整うとその後の話が耳に
入り易くなります。
また、
対面して話す人が生懸命に
話している様子を見ると
自分も意見したり話したく
なってくる事も
心理としてあります。
そうすると理想的な
会話出来る態勢が整います。
つまり富永は話を相手から
引き出す為にそのような
手法を使っているのです。
相手が人の悪口を言って
いるのだから自分も少しくらい
言っても大丈夫、同罪だと思い
つい話してしまうのが
富永のやり口なのです。
高城
「なるほど、世渡りの為に
あえてそんな事をやって
いるのは解ったが
それで楽しいのか?」
本田
「多分人から思い通りに情報が
得られたら楽しいと思うタイプ
なのでしょうね」
「でもそれでは敵が
増えるんじゃないか?
まして悪口を言われる側は
たまったもんじゃないぞ」
「そうですね、
敵を増やさないのは自分が
相手を叩ける情報と正論に
基づいた悪口を言うから
中には納得する人もいるから
なのでしょうね」
「今回は俺の部下からの話で
聞いたんだがその部下も
富永に悪口を言われて
悩んでいるらしい」
「では悪口を言われた時の
対処法を教えておきましょう」
そう言うと本田は
会社内で悪口を言われた時の
対処法を話し始めました。
つづく