本田承太郎は藤堂物産で働くサラリーマン。
本田たちは新事業の為に倉持部長から
リスクマネジメントの講義を受けて
いました。
第115話:食の安全の重大さ
倉持部長の講義ではお店の営業中で
トラブルとなるクレームについて
ここまで説明しました。
クレーム以外の営業中トラブルでも
これまでの倉持の説明どおり、
事態を想定しておく事で
落ち着いて対処する事が出来ます。
リスクマネジメントではその様に
予想できる問題に向き合い
スタッフや自分自身がパニックを
起こさないように準備をすることが
目的なのです。
倉持
「飲食店で大きな事件になった
問題とはどんなものが
あるでしょう?」
本田
「食品偽装やメニュー誤表示は
話題になったので最近調べて
事例を知りましたが」
「そうね、では食品偽装以外で
お客様の命に関わる問題と言えば
何か解るかしら?」
前田
「食中毒事件とかですか?」
「そう。食中毒は飲食店を
経営する人にとっては避けては
通れない重要な管理責任に
なるのです」
「確かに食品衛生管理の資格や
調理師免許試験でも食中毒の
知識が必要という事ですしね」
「では今回は食中毒について簡単に
説明していきますので
調理師資格や衛生管理の資格を
取得する時と営業開始に向けて
勉強していきましょう」
そう言うと倉持は飲食店の
衛生管理について話を始めました。
最近では飲食店での衛生管理が
非常に問題視されています。
実際に衛生管理を怠って
人命を失う様な重大な事件も
起きていて社会問題となりました。
近年で有名なのは、
焼肉酒屋えびすのユッケ事件では
ないしょうか。
この事件は有症者数181名、死者
5名と言う社会的大事件と
なりました。
その時にえびす社長が話題先行で
大きくメディアに取り上げられ
社長だけ悪者のようでしたが
事件の背景を考えると組織や
加工業者にも大きな問題があった
事は明白です。
人の口に入る物を取り扱う時点で
命に関わる重大な責任が伴います。
その仕組みや管理をちゃんと
作れなかった焼肉えびすの社長は
確かに責任重大ですし
誰かが指示した証拠隠滅は
組織ぐるみだったので関わった
人間は例え部下でも正否は理解
出来るはずなので飲食業を営む
資格などありません。
加工業者のずさんさはもっと
ひどい有様です。
それ以降も多くの焼肉店で
生食肉を提供するお店が減らない
というので国も是正を行うしか
無いと言う状況になりました。
商売で売れるから規制されないと
危険な毒の付着する食肉でも
平気で提供すると言うのが
今の飲食業界の姿なのです。
飲食店を始めると言う事は、
人の口に入る食品が人の命をも
左右する事実を認識する事です。
ニュースを見ても解るとおり
牛レバーやユッケなども生の
ままでは食べられなくなりました。
一部のずさんな飲食店が
他の大多数の店を貶める結果に
なったという事は非常に
残念でなりません。
だからこそその危険性と予防策を
ちゃんと取って欲しいと思います。
サービス業の心得として言える事
私たちの行うサービスでもし、
お客様が自分の家族だったら、
自分の恋人だったら、
大事な人だったら
そう考えて対応していれば
その責任の重さも理解できると
思いますし重大な過失となる行為は
出来ないはずです。
あるコンビニの生産工場で働く
ラインマネージャーが
「自社のコンビニでは弁当を
食べられそうにない」なんて事を
言う人もいた位です。
コンビニ弁当に毒が入っている訳
ではなく食品添加物の事を言って
いるのですが、
自分の子供に与えられないけど
人には平気と言うのは
いかがなものでしょうか。
倉持の真剣な表情に本田と前田も
この問題の重要性を理解して
食の安全の重大さというものを
感じていました。
そして倉持は食中毒についての
基礎知識を説明し始めたのでした。
つづく
- 踊る「食の安全」 [ 松永和紀 ]

- ¥1,470
- 楽天