藤堂物産で働く本田承太郎はこの会社で10年働くサラリーマン。
飲食店出店プロジェクトを進める本田承太郎は
あるカフェで変わったサービスに目を付け、
そのお店に話を聞きに訪れていました。
第39話:お店の共通意識
本田承太郎がこのお店で疑問に思ったことは
お土産でサービスを品を渡しているということでした。
本田は店長に、
なぜこういうサービスをするのか、
良い料理や接客を向上されば良いのでは?と
質問を投げかけていました。
すると店長はオープン当初の事を話し始めたのです。
「オープン時にうちのお店は
ハッキリ言って上手くいてませんでした。
特にスタッフの連携が取れず、
みんな一生懸命やってるけどお互いに
ぶつかり合ってチームワークには程遠いものでした。」
「仕事では意見がぶつかり合って良くなるもんじゃないんですか?」
本田がそう聞くと、店長は笑顔でこう答えました。
「そうですね、でもオープンを楽しみに来て下さったお客様には
スタッフ同士のいざこざや開店間もないからという事などは
言い訳に過ぎません。
お客様にとってはおいしい料理、その時間や空間を
楽しむために来店したのにお店の都合や熟練度は関係ありません。
単純に私たちの仕事のクオリティが足りてないだけだったのです。」
「お店の新規オープンから完璧に行うには
お店の開店経験や充分な準備を経験した人でないと
難しいという事なのでしょうか?」
「実際そうだと思います。
私も以前の職場では飲食店では無いにしても
接客や教育を指導する立場にあって
多少の自身はありましたし、
スタッフはみんな不真面目な人はいなくて
成功するものだと開店するまで思ってましたから。」
「原因は何だったんでしょう?」
「今考えると、多分ちょっとの意識の違いだとは思いますけど
皆が同じ方向を向いて無かったんだと思います。
料理長は元、イタリアンのシェフで
知り合いに紹介して頂いた腕のある職人さんです。
私も何度も試食して本当においしい料理ばかりで
自信をもって勧められる料理ばかりでした。
接客係やアルバイトも飲食店経験者や知り合いに頼んで
サービス力は比較的高い状態で人材を揃えることが出来たんです。」
「それがどうして上手くいかなかったんでしょうか」
「簡単に言うと、調理場や接客係、アルバイトの
お互いの仕事に対するプライドがぶつかり合ってしまったんです。
料理は妥協できない、接客では早く提供したい、
お客様とコミュニケーションを取りたいという事が
自分たちの目の前の仕事ととして全うしようとすると
連携がうまく取れなかったんですよね」
「妥協しない為に喧嘩してたということですか?」
「そうですね、キッチンからは店内は見えませんし
接客中は調理場やウェイティング席などは
どうなっているのか解りません。
目の前の仕事に必死だから時間が経てば
お互いの性格や人となりが解ってきて
協力しあえるのかもしれません」
「それでお土産はどう関係しているんでしょうか」
「もともとお客様から、
このオリーブオイルが美味しかった、個別で売ってないの?
と言われた事がキッカケでもあったんですけど
お客様の要望に応えるというよりは
スタッフの連携を図るために始めたんです。」
「どういうことでしょうか」
「料理長には初めは反対されましたけど、
無理言ってオリーブオイルを作ってもらい、
接客係にはアンケートや家庭での簡単な使い方を
メッセージカードにして作らせたんです。
お客様には喜んで頂けて、
美味しかった、こうやって使ってみたとい話が聞けて
接客係が嬉しそうに話すようになったんです。
もちろん、調理スタッフにもその話をすると
調理場からも家庭でのアレンジ方法のアドバイスを
接客係に話すようになっていました。」
「それを狙ってたんですか」
「特にオリーブオイルじゃなくても良かったんです。
調理場とホール接客では隔離されてるので
連携という意味では声をかけるしか無いんですけど
こういうお店の共通作業を使ってお客様の為になる事をしたら、
仲間全員でそこに向かって取り組めるんじゃないかと思ったんです。」
「実は雑誌に載ってるのを見たんですが
オリーブオイルが美味しい店と紹介されているのは
これが原因で話題になったって事なんでしょうね。」
「有り難い事ですけどそうなんでしょうね」
「しかも、スタッフの連携を図るために始めた
サービス施策が上手くいってお客さんも喜んでくれて
味を知って貰える、接客力も上がる、
自宅でもお店の味を思い出して貰えるという
一挙に何得もあるアクションになっている所がスゴイですね」
「そこまで考えてなかったですけど、
やっぱり自宅で僅かでもお店の事を思い出してもらえるのは
大きい事なんだと感じました」
こうして本田承太郎は今回の成功事例は
「もしかしたらたまたまかもしれない、でもお店の共通意識が大事なんだ」
という事を思ったのでした。
新規オープンの難しさ、スタッフ同士の連携やお店の共通意識
借金の危険性から繁盛までの道のりにおいて
どれをとっても簡単にはいきません。
成功事例もすぐに真似出来るものではないという事も
理解してお店を後にしました。
そして、
自社に戻った本田承太郎は部下の前田と共に
あの人に呼び出されていたのでした。
つづく
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