インド・バンガロールからニューデリーへ~女ふたり列車の旅回想録 | inquitのブログ

inquitのブログ

ブログの説明を入力します。

 およそ20年前、4年間ほど南インドに滞在したことがあります。その間、幾度かインド各地への旅行を試みたのですが、何しろインドは広い!! それに当時は交通機関も充実していませんでしたので、万事「予定は未定」で展開していきました。

 

 バンガロールからニューデリーまで2,400km 。現在は39時間位と言われています。当時、この間は列車で、2泊3日の旅でした。

 

 出発時、駅員さんに「いつ着きますか?」と聞いたら、「知らない!」と言う返事。

列車に乗り込んでから、乗務員にまた聞きました。「デリーには、いつ着きますか?」。「知りません」

同席の乗客たちにも聞いてみました。「いつデリーに着くんだろう?」

「さあ~」。

分かったのは、列車の到着時間なんか誰も気にしていないということでした。

 

 車両は等級に分かれていて、一番いいのがエアコン付き寝台車、次が寝台車、座席指定車、指定なし車に分かれていました。私たちは女2人旅でしたから、治安を考えてエアコン付き寝台車にしました。

 

 ホームで列車に乗り込む時、乗り口に張られた名簿を確認します。

自分の名前が書かれた車両に乗り込むわけです。

私たちのブロックに乗り込んできたのは、おじさん3人に、ちょっと老けたお兄さん1人。それに私たち2人。何回数えても6人です。横になれるスペースは日本の寝台車と同じ4人分。なのに6人が乗り込んだ? 

 

さすがインド!やっぱりインド!

随分インドにも慣れてきた頃だった私たちは、もう驚きません!

何のこれしき! インドにいればいろんなことが起こります。

 

 バンガロールでは、2人乗りのリクシャー(オート三輪)に7人乗り込むのを見たことがあるし、5人乗りのタクシーに10人以上乗っているのも見たことがある。座っている人の膝の上に、重なって、次々と座っていく、乗れなければ運転手の膝の上にだって乗り込むのがインド人。車の天井までびっしりと人で詰まっていることもある。大の大人が平気でそういうことをやり、運転手たちも普通~のことのように受け止める。

これぞインド!と言うべきか?

 

 いろんなことを鑑みると、4人分の寝台車に6人なんてかなり抑えている方だと思えます。だって寝台車の椅子は長~いですから。

それに私たちの車両は「特等」デス。通路には補助席みたいなのもついていました。眠れない時、反対側の景色を見たい時、お一人様に限り着席できます。

 

 一般庶民のインド人たちは、くっつきたがりです。買い物で列をなす時、神殿でのプージャの時、湖畔をそぞろ歩きする時、どんなに広いスペースあってもペッタリくっついてきます。それで自分の周りに幾分かの空間を欲しがる西洋人との間にしばしばトラブルが発生するんです。私たち日本人は、クソ暑いインドで、知らないインド人にペッタリ体を押し付けられれば、逃げたくなるのも理解できます。でも、くっつきたがりのインド人にとっては嫌がるワケがワカラナイようです。

 

 そういう国民性も手伝ってか、4人の所に6人あてがわれても、誰も苦情を言う人はいませんでした。誰かがくっついて2人で寝、1人が補助席に行くだけでいいんです。

 

 外国人であり女性である私たち2人はまず除外。自分たちでそう決め、夜も更けぬうちに、早々に上段を確保しました。夕食もまだだし、外の景色を眺めていたい気もあったのですが、そんなことは言っていられません!2泊の寝床を先ず確保しなければ・・。

 

 体調管理のために断食を覚悟して乗り込んだ列車でした。車中、変なものを食べて、変なことになったら大変です。

でも、同席のインド人が自宅で作った大量のイドゥリを持ち込んでいて、上段に陣取って寝転がっている私たちにも、「一緒にどう?」と、声をかけてくれました。インド人って本当に親切なんです。多分、彼の3日分の食料だったのかもしれません。同席者にぜ~~んぶ提供してくれました。皆で和気あいあいと会食。ポットに持ってきていたチャイまで皆で飲み干して・・・。その家庭料理が美味しいのなんのって・・・赤痢になろうがコレラになろうが、「どうでもいいワイ」と、思えるほど美味しいイドゥリでした。今では彼の顔も思い出せないくらいです。コロッとした体格の、善良な人だったと記憶しています。いまさらですが「ありがとう~!」と深い感謝を彼に捧げたいと思います。

 

 列車では、どこかの駅に停車する前に、乗務員らしき人が御用聞きに回ってきます。「チャイ、ラッシー、バコラ、ワダ、ウップマー、ポンガル、イドゥリ、ドーサ・・・」  乗客は、それぞれ好きな食べものを頼んで次の駅で買ってきてもらいます。

 私たちは2日間何も頼みませんでした。私たちが、飲み食いしない理由を知らない同席のインド人たちは、「チャイ位飲んだ方がいいよ」と気遣ってくれました。自分が買ったチャイを、親切にも分け与えてくれました。

 

 3日目、いつデリーに着くか誰も知らない列車は、前日と同じように、たまにどこかの駅に停車しながら走っていました。これまた前日と同じように御用聞き乗務員がやってきました。皆思い思いに食事を頼んでいます。ふと、「私たちも頼もうか?」と言うことになり、「バコラ」を注文しました。「10ルピー(30円)」でした。普通よりも高めです。

駅に着いたら係の人がくちゃくちゃの新聞紙の塊を持ってきました。何かと思ったら、私たちの「バコラ」でした。薄汚れた新聞紙に中に、アツアツのバコラがいっぱい入っていました。一つ手に取って食べたら「うまあ~~い!!」

こんな美味しいバコラは初めてでした。以来、私はバコラを見たらすぐ買ってしまいます。でもどれも列車のバコラにはかないません・・・。

 

 何時に着くか定かでない旅も終わりに近づいてきました。だってもう3日目です。それでも乗客たちはのんびりと寛いでいます。

前の座席に座っているちょっと老けたお兄さんは、相変わらずスーツケースを座席の足に鎖で縛りつけています。貴重なものが入っているのでしょうか?盗難防止だと思います。私たちや他のおじさんたちは荷物なんてほったらかしでした。

 

 陽が落ちてもまだデリーではないらしい。アナウンスもないし、降りる支度をする人もいません。

夜が更けて、そろそろ深夜12時か?と思う頃、誰かが「デリーだ」といいました。一斉に皆が自分の荷物を確認しています。

私たちはドデカいスーツケースを一つづつと、疲れた背中に背負うリュックを一個づつ。スーツケースはインドでの生活必需品が全部入っているので40kg位はあります。

 

 列車がホームに入ると突然喧騒の中に巻き込まれた状態になりました。ホームのアナウンスは何を言っているのか、さっぱりわからないほどガンガン響き、乗客たちの呼び交わす声や、ホームを走る客引きの声が頭上を飛び交い、連れの彼女とはぐれないように必死でした。

 

 重い荷物を引きずる私たちに目を付けたのか、クーリーが3人駆け寄ってきて、挨拶もなく、許可もなしに、私たちの荷物を自分たちの頭の上に乗っけて走り出しました。スワッ!持ち逃げか?とばかりに急いで追いかけました。40kg以上もありそうなスーツケースを頭にのせて、いとも身軽に走るや走る。大混雑の中、階段だって飛ぶように駆け上がります。必死で追いかけました。

駅構内を出たところで、さすがに一息つきたくなったようで、荷物を下ろし、「マダム、いいホテルがあります」という。

ホテルは予約していたので「いらない!」と言って、タクシー乗り場に行こうとしたら、又、荷物を担いで走り出す。

何をする!とばかりに追いかけたら、駅前の旅行案内所に入っていくではありませんか。追いかけて入ったらなんとも怪しい雰囲気~。

インドのホテルや店舗では、入り口付近の石の床に従業員がごろ寝しているのをよく見かけます。ここでも何人かが床に寝ていました。危うく踏みそうになりました。

 

 責任者らしい若者が出てきて、「ホテルをお取りしましょう」と言う。

「もう予約済みです」と言うと、

「どこのホテルですか?確認しましょう」

「○○ホテル」と言うと、電話をかけ始めました。そして、

「そこのホテルはキャンセルになっております」という。

「そんなはずはない!」といったら、「じゃあ電話に出て下さい」と言う。

電話に出たら「お客様の予約はキャンセルになっています」だって。

なんだか怪しい~~!私たちは勘のいい女二人連れ。

「一応そのホテルに行ってみます」と言って、そこを出ることにしました。

でも、相手もただでは収まらない。

「マダム、タクシーは如何ですか?」と食い下がる。ここは真夜中のデリーです。穏便に済ませたい~。

「では、タクシーを」と、頼んだ。幾らかと聞くと400ルピー(1200円)だという。多分、半分以下のはず。

タクシーに乗ったら、「ハイッ!着きました」と、とあるホテルの前で止まった。「ここは何というホテル?」と聞くと、予約したホテルではない名前を言う。「ここじゃあないでしょ」と言うと、「マダム、ここはとてもいいホテルなんです」という。

「違うところだからタクシー代も払えません」と言ったら、慌てて

「すぐそこですから」と、私たちが予約していたホテルに連れて行ってくれました。

タクシー代を払う時、「いくら?」と聞いたら「200ルピー」と言う。やっぱり・・。案内所の彼との打ち合わせがうまくできていない模様~。ちょっと高いけど夜中だし・・と思って黙って支払い、「これはあなたに」と言って別に20ルピーを渡した。すると満面の笑みを浮かべ「マダムありがとう~」と夕闇に消えていきました。

 

 後で、「地球の歩き方」を見たら、「デリーの悪質なツーリストに気を付けよう」とこの案内所の写真が載っていました。

予約していたホテルは、キャンセルされてはおらず、無事宿泊することができ、北インドの旅が始まりました。