前作「遺跡発掘師は笑わない 悪路王の右手」の続編です。

本作「悪路王の左手」を読み終えるのに、かなり時間がかかりました。話のスケールが大きく、また幾つもの時代が絡み合っていて、頭を整理しながら読む必要があったからです。
いつになく桑原先生の創造力が壮大な作品でした。

東北の蝦夷の話から、桓武天皇や出雲や百済国、現代の韓国、台湾の話など、いろいろな史実を交えての歴史ファンタジー。
もしこのストーリーが実在したら、日本史の大発見ですね。まあ、実在してもしなくても、発掘した金印を勝手に他人にあげてはだめでしょ、無量くん

サスペンス要素が強い作品でしたが、入り組んだ史実を整理しながら読んでいたため、サスペンスやアクションよりも歴史ファンタジー色を強く感じました。
史実の説明が多かったので、桑原先生の風景描写を読むと、ほっこりしました。

「陸前高田の家々に明かりが灯り始めるまで、ふたりは景色を眺めていた。
北の守り神のような氷上山が、町を懐に抱くように、大きな腕を広げている。
風は遥か太平洋から吹いてくる。
耳には届かぬ潮騒が、穏やかに過ぎていく時間を包み込むようだった。」

桑原先生の風景描写、詩的で優しいですね

本作の終わりで謎の人物が登場し、この先の展開が気になりますが、嵐の前の穏やかな時間が、少しでも長く続いていくことを願いたいです。