久しぶりに梨木香歩さんの作品を読みました。
梨木香歩さんの静かで落ち着きのある文章は、心を穏やかにさせます。
凛とした透明感を持ちながらも、優しく包み込む、そんな作品集です。
梨木さんがあとがきで、この作品集の繋がりは、
「ひとはみな、それぞれの生の寂しみを引き受けて生きていく」
と書いていますが、確かにそうだなぁと感じました。
結局人は一人なのだと、そしてそれらを含めありのままの自分や現状を受入れていく、そんな印象を受けた作品集でした。
個人的に印象に残ったのは、「コート」、「丹生都比売」、「ハクガン異聞」。
「コート」は、母親の趣味で同じコートを着る姉妹の話。妹の最後の行動が、姉の、そして妹の生きてきた年輪のようで印象的でした。
「丹生都比売」は天武天皇と持統天皇の皇子である草壁皇子の話。
死は悲しいものでもあり、苦しみからの解放でもある。草壁皇子の最期の心情描写が、静謐で幻想的でした。
丹生都比売は天照大神の妹で、和歌山県に丹生都比売神社があるのを、この本をきっかけに知りました。高野山とも繋がりが深い神社で、いつかお詣りしてみたいですね。
「ハクガン異聞」は、『家守綺譚』のような、あの世とこの世の境があいまいな話です。
ハクガンとは何だろうと調べたら、白雁だったのですね。
人ならざるもの(今回は鳥)が人としてこの世で生きている、不思議なお話でした。
秋の夜長に読むのには、ぴったりの本かもしれません。
