「博士の愛した数式」で名前は知っていたけれど、初読みの作家です。

とある町にある古い小さなアーケードを舞台にした連作短編集です。
アーケードの経営者兼配達係の女性を中心に、それぞれのお店の店主やお客との話が語られています。


どの作品も死や暗さを感じられると同時に、それらを誰かが受け止めている、悲しくも優しいお話ですね。
全体的に暗い感じは否めませんが(笑)。

個人的に好きな短編は、「紙店シスター」です。

紙店シスターは、レターセットやカード類、万年筆やインクなどを扱う店で、使用済みの古い絵葉書も売っています。
この短編では、古い絵葉書にまつわる果たされなかった約束、母の死など悲しい話が書かれていますが、お客である青年がその古い絵葉書を買うことで、救済されているように感じました。
青年本人は、その古い絵葉書にまつわる話は全く知らず、また関係者でもないただの第三者です。しかも、誰かを救済する意図もなく、ただ彼はお店にある古い絵葉書を買っただけなのに、それが絵葉書の差出人やアーケードの女性経営者の心を救済しているように思えてなりません。
自分の行為が、意図せず誰かの想いを救う。
不思議だけど、優しく暖かい気持ちになれました。


最終話の短編の最後の場面が、うまく汲み取れなくて、何かを暗示しているのだろうか?と気になります。
読者の想像にお任せします的なことなのか、
はたまた私が行間を読めていないのか。
ふわふわした感じの終わり方に思えました。