表紙を見たとき、面白そうなのかそうでないのか、よくわからない本だなあというのが第一印象でした。
個人的に、文庫版の表紙絵は好みではなかったのですが、帯に「心に届くハートフル・ストーリー」とあったので、思い切って買ってみました。
読み始めて、面白い。
そして、一気読み。
文庫本400頁にもかかわらず、2日間で読了。
読むのが遅い私でも、テンポよく読むことができました。
裏表紙の要旨
「飛ばされて会社所有の大豪邸の住み込み管理人となった25歳の僕は、無人のはずの屋敷に次々と現れるワケありの人々に戸惑いつつも任務をまっとうしようと奮闘する。仕事とは、誰かを大切にすることとは・・・。まっすぐな想いが心にしみるハートフル・ストーリー」
表紙に牛の絵が描いてあるし、タイトル「COW HOUSE」なのに、牛は飼っていないし、山より海の話です。
いろいろな意味で、期待を裏切っています(笑)。
大豪邸が建っているのは鎌倉なので、神奈川県民としては非常に馴染み深い話でした。そして、確かにハートフル・ストーリーでした。
一見すると普通の人々であるのに、それぞれがいろいろなものを抱えていて、問題を先延ばししながら生きている。
それらを全て一挙に解決してしまうような魔法の杖はないけれど、一つの突破口から少しずつそれぞれの問題を解決に導きつつある様子に、心の中でエールを送りたくなります。
家族ではないのに、家族以上の結びつきになっていく人たち。
主人公の「真っ当に生きて、できれば関わった人たちはみんな幸せになってもらって、僕と知り合って良かったって思ってもらって、そして、いつか天国で皆に会ったときに、しっかり生きてきたよって言おうと思って」の言葉から、だから「COW HOUSE」に集う人々が結びついていくのだなあと感じました。
私が気に入った箇所は、主人公が上司の仕事上での冷酷さを理解できたような気がした場面です。
「切り捨てと思われるのは辛いけど、慈善事業じゃない。何もかも全てなんてできるはずもない。だとしたら、できることをしっかりやるしかない。」
何もかも全てできることにこしたことはないのだけれど、仕事上、時間・経費・労働力は限られているので、できることをしっかりやる姿勢に共感しました。
登場人物は、どこにでもいそうで、どこにでもいなさそうな人々ばかりです。
その中でも、ピアノ調律師の萩原さんがお気に入り。
萩原さんのヘンな体操が気になります(笑)。
赤の他人が、一つの家を中心に集まり、そして、それに連なるようにそれぞれの家族が集まっていく。
小さな幸せが、夢が、波紋のように広がっていく。
読み終わった時、こころがほっこりするお話でした。
