今回ご紹介する本は、長野まゆみさんの「野川」。
何ヵ月か前に本屋でみかけ、帯に伝書鳩がどうとか書かれていたので、気になっていた本でした。
なぜ鳩に惹かれたかというと、我が家に数ヶ月前から人懐っこいキジバトが遊びにきているからです。
遊びに来るたびにお米をあげていたら、「ご飯ちょーだい」アピールをするようになり、なんとも愛嬌のあるキジバトでして。
アピールといっても、庭のテラスの前を行ったり来たり、部屋を覗きこんだり、テラスのガラス戸が空いているとひょこひょこ部屋へ入ってきて、家族が気づくまで部屋でじっと待っているという、変わったキジバトです。
おや、キジバト談義になっている(笑)。
さて、本題に戻って、本の紹介を。
この本は中学生日記の香りがほのかにします。と思ったら、読者感想文の推薦図書だったようですね。納得。(^^)
内容は、両親が離婚した中学二年生の男の子が、父親や、先生や、先輩や、鳩と接することで、大切なことを感じ考え学んでいくお話です。
風景描写が、これでもか!というくらい緻密に細かく丁寧に書かれています。
どうしてこんなに事細かに書いているのか、疑問に感じましたが、その答えは担任の先生の言葉にあったようです。
「私は自分の目で見なくても心にのこる風景が、この世にあるんだということを知った。」
「その風景は、きみ自身が目にしたのでも体験したのでもないが、きみだけのものとしてそこにある。(中略)実際に目にした風景と変わらないくらいに、あるいはそれ以上のあざやかさで目に浮かぶはずだ。」
読者は実際に本に書かれている風景を見ることができないけれど、書かれた風景描写を読むことで、実際に目にした風景と変わらないくらいに、あるいはそれ以上のあざやかさで目に浮かばせる効果を狙ったのではないかしら?
この本で私が特に印象に残ったのは、ネジの例えです。
ある子供が家のなかで古びたネジを拾い、両親にたずねたけれど、なんのネジかわからない。
ひとまずとっておき、しばらくして家を建てかえるために、壁掛けの時計を外したら、その裏板のネジが1つ外れており、古びたネジを思い出してそのネジをはめたら、ぴったり合い、裏板がちゃんと固定された。
すると長らく空回りしていた歯車が、裏板が固定されたことで正しくまわりはじめ、誰もが飾りだと思っていた文字盤の中の扉が開き、そこから小鳥が顔をだして唄いはじめた。
互いに関係がなさそうに思えたものがつながることの幸福を、ネジの例えで表現しています。
この例えには前置きがあって、
本を読むことがどうして重要なのか?
どんな得があり、どう役立つのか?の答えとして、
得はないし、役立つかも怪しい、でも無駄ではない。その答えの具体的な例えとしてネジの話が挙げられていたわけです。
私は、本を読むこと自体が楽しいので、得やら、役立つやらは考えたことはなかったけれど、互いに関係がなさそうに思えたものがつながることの幸福を、感じることができるといいなと思います。
