ネイザン・モリス(Nathan Morris/別名:アレックス・ヴァンダープール[Alex Vanderpool]/出生名:Nathan Bartholomew Morris/1971年6月18日~)は、アメリカ合衆国のシンガー。Boyz II Menのオリジナルメンバーの一人。
1971年6月18日、ネイザン・バーソロミュー・モリスは、ペンシルベニア州フィラデルフィア(Philadelphia, Pennsylvania)で生まれる。
1985年、フィラデルフィア創造芸術高等学校(Philadelphia High School for the Creative and Performing Arts/CAPA)に通っていたネイザン・モリスは、同級生のマーク・ネルソン、ジョージ・バルディ、ジョン・ショート、マーガライト・ウォーカーとともに、ヴォーカル・グループ「ユニーク・アトラクション」を結成。
1987年、学校のコーラス部でメンバーと知り合いだったウォンヤ・モリス(Wanya Morris)が加入。新入生だった彼がグループに最後まで残ることになる。
1988年、バルディとショート、ウォーカーの3人が高校卒業に伴い脱退した。
グループが新たにメンバーに加えたのがショーン・ストックマン(Shawn Stockman)。きっかけは、コーラス部で彼のソロを耳にしたことだった。さらにマイケル・マッケリー(Michael McCary)も参加。
この頃、グループ名をニュー・エディション(ボビー・ブラウンが在籍していたグループ)の曲名“Boys To Men”から「BOYZ II MEN」(ボーイズ・トゥ・メン)とする。
1989年、ベル・ビヴ・デヴォーのコンサートへ行き、楽屋に潜り込みアカペラを披露、そこからできた縁を活かし、レコード契約に至る。
その後、個人的な事情もあり、結成当時からのメンバーだったマーク・ネルソンがグループを離脱。後に飛行機に乗るのが嫌で脱退したと本人が語っている。こうしてボーイズIIメンは、ネイサン・モリス(Nathan Morris)、ウォンヤ・モリス(Wanya Morris)、ショーン・ストックマン(Shawn Stockman)、マイケル・マッケリー(Michael McCary)の4人編成としてラインナップが決定した。
1991年4月30日、1stアルバム『クーリーハイハーモニー』(Cooleyhighharmony ) をモータウンから発表。プロデューサーはマイケル・ビヴンズ。一般的にR&Bグループは1人または2人のリードヴォーカルとバックコーラスという構成が多いが、ボーイズIIメンは当初から全員がリードヴォーカルという形を採用、ウォンヤ・モリスのビブラートの効いたテナー、ショーン・ストックマンのテナー、ネイサン・モリスのバリトンとマイケル・マッケリーのバス(彼はいくつかのヒット曲で台詞も担当している)という彼らのスタイルは、グループのトレードマークとなる。
1stシングル“モータウンフィリー” (Motownphilly) はダラス・オースティンのプロデュースで、米音楽誌『ビルボード』(Billboard)の総合シングルチャート「Billboard Hot 100」(以下「全米」)3位・同誌「Hot R&B/Hip-Hop Songs」チャート(以下「R&B」)4位を記録。ヒップホップスタイルの色濃いMVには、彼らの出身校の同窓生でザ・ルーツのメンバーであるブラック・ソートとクエストラヴがカメオ出演した。2ndシングルは、1975年の映画『クーリー・ハイ』で使われたモータウンの古典的名曲のG.C.キャメロン“グッドバイ・トゥ・イエスタデイ” (It's so hard to say goodbye to yesterday) のカヴァーで、全米2位・R&B1位を記録。続いて“ウー・アー” (Uhh Ahh) が3rdシングルとしてリリースされ、全米16位・R&B1位に達した。
アルバムは900万枚出荷という成功を収め、『ビルボード』誌の総合アルバムチャート「Billboard 200」(以下「全米」)3位・同誌「Top R&B/Hip-Hop Albums」(以下R&B)1位・全英7位を記録、1992年のグラミー賞「R&Bデュオ/グループベストヴォーカル部門」を獲得した。また英国人歌手シール、そして同期ヴォーカルグループのカラー・ミー・バッド、ダンスグループ「C+Cミュージックファクトリー」とともに最優秀新人賞にもノミネート(受賞はシンガーソングライターのマーク・コーン)。
1992年、彼らはM.C.ハマー(MC Hammer)の「トゥー・レジット」 (2 Legit 2 Quit) ツアーに参加し、オープニングアクトを務める。米国ツアーの最中、ツアーマネージャーのカリル・ラウンドツリーがシカゴで殺害されるという事件が起きた。
6月30日、シングル“エンド・オブ・ザ・ロード”(End of the Road)をリリース。本曲はケネス「ベイビーフェイス」エドモンズがプロデュース兼共作を担当したエディ・マーフィの映画『ブーメラン』(Boomerang)のサウンドトラックの1曲だった。本曲は、2022年現在彼らの最大のヒット曲である。同年8月15日に全米1位に達すると、11月7日まで13週連続1位をキープ、1955年7月9日のロック時代以降のビルボードチャートで1956年にエルヴィス・プレスリーの両A面シングル“冷たくしないで/ハウンド・ドッグ”が達成した11週連続1位という記録を36年ぶりに塗り替えた。本曲は全英をはじめ世界各国でチャート1位を占めるなど世界的成功を収め、彼らはあっという間にスターダムを駆け上がった。1stアルバム『クーリーハイハーモニー』はこの年に同曲をボーナス・トラックとして追加したバージョンで再発売された。しかしこの曲は本来『ブーメラン』のサウンドトラックとして収録した1曲だったこともあり、後にマイケル・ビヴンズがプロデュースした『イースト・コースト・ファミリーVol. 1』 (East Coast Family, Vol. 1) ではシングルコレクションのひとつとしか見做されなかった。
同コンピレーション・アルバムをリリースして程なく、グループとマイケル・ビヴンズの共作関係は終わりを迎え、彼らはあくまでプロとしての職業的な意味で決別することになった。ボーイズIIメンはその後も数年間、ベイビーフェイスをはじめとする著名プロデューサーと曲を作り続けた。
11月10日、シングル"In the Still of the Nite (I'll Remember)"をリリース、全米3位・R&B4位を記録した。
1993年10月5日、クリスマス向けコンピレーション・アルバム『レット・イット・スノウ』(Christmas Interpretations)をリリース、全米16位・R&B6位をマーク。ここからは、Brian McKnightをフィーチャーした"Let It Snow"が全米32位・R&B17位に達した。
1994年8月30日、2ndオリジナル・スタジオ・アルバムで、グループ通算3枚目となる『2』(II)をリリース。全米1位・R&B1位を記録し、RIAAから12×プラチナ認定を受ける大ヒットとなった。ここからは、“メイク・ラヴ・トゥ・ユー”(I'll Make Love to You)が全米1位・R&B1位・全英5位になり、全米1位連続14週と記録を自己更新したのをはじめ、“ベンデッド・ニー”(On Bended Knee)が自身3曲目となる全米1位・R&B2位、"Water Runs Dry"が全米2位・R&B4位、"Thank You"が全米21位・R&B17位に入った。
1995年3月1日、第37回グラミー賞にて、彼らはR&Bベストアルバム部門(『II』)、そしてR&Bデュオ/グループベストヴォーカル部門(“メイク・ラヴ・トゥ・ユー”)の2部門で賞を獲得した。
10月31日、ヒップホップMCのLL・クール・J(LL Cool J)とのコラボ・シングル"Hey Lover"をリリース、全米3位・R&B3位・全英17位に到達した。
11月14日、マライア・キャリー(Mariah Carey)とのデュエット・ナンバー"ワン・スウィート・デイ"(One Sweet Day)をリリース、全米1位・R&B2位・全英6位になり、特に全米チャートでは16週連続1位と記録が更新された。
1997年9月23日、3rdアルバム『エヴォルーション』(Evolution)をリリース。ここからは、ジャム&ルイスがプロデュースした"シーズンズ・オブ・ロンリネス"(4 Seasons of Loneliness)が自身4曲目、デュエットも含めると5曲目となる全米1位をはじめ、R&B2位・全英10位を記録した。また、"A Song for Mama"が全米7位・R&B1位になった。
同年に始まったワールドツアー「エヴォルーション」は、チケットの売り上げという意味では大きな成功を収めたものの、レコード会社との軋轢やメンバー間のいざこざにグループは悩まされることになる。さらにメンバーの健康問題が追い打ちをかけた。ツアーの最中、ウォンヤ・モリスの声帯ポリープが悪化し、彼の回復までいくつかの公演が延期されることになった。また、従来から患っていたマッケリーの脊柱側彎(そくわん)症は、ダンス曲でのパフォーマンスが困難な程に悪化した。
1998年、映画『The Prince of Egypt』のサウンドトラックに"I Will Get There"を提供、全米32位・R&B23位に達した。
2000年9月12日、5thアルバム『ネイザン・マイケル・ショーン・ウォンヤ』(Nathan Michael Shawn Wanya)をユニバーサルからリリース、全米4位・R&B3位をマークした。アルバムからのシングルは、"Pass You By"がR&B27位、"Thank You in Advance"が全米80位・R&B40位になった。
2002年6月11日、6thアルバム『フル・サークル』(Full Circle)をアリスタからリリース、全米10位・R&B5位をマーク。ボーイズIIメンが4人組としてリリースした最後のアルバムとなった。ここからのシングルは、"The Color of Love"がR&B51位、Faith Evansをフィーチャーした"Relax Your Mind"がR&B52位になった。
2003年1月30日、脊柱側彎症の持病をかねてから抱えていたマイケル・マッケリーが遂にグループから脱退。
4月30日、アリスタはボーイズ・トゥ・メンとの契約を解除する。残された3人のメンバーは音楽シーンの最先端を追い続ける人々の目から消えてしまった。彼らの音楽が、当時の音楽産業の中で居場所を見つけられなかったためだ。
2004年8月24日、7thアルバム『スローバック Vol.1』(Throwback, Vol. 1)をKochからリリース。全米52位・R&B8位。ここからは"What You Won't Do for Love"がR&B60位になった。
2005年、8thアルバム『Winter/Reflections』をリリース。
2006年、9thアルバム『ザ・レメディ』(The Remedy)をリリース。
2007年11月13日、10thアルバム『モータウン〜ヒッツヴィルUSA』(Motown: A Journey Through Hitsville USA)をリリース。全米27位・R&B6位・全英8位を記録した。ここからのシングルは、"Just My Imagination (Running Away with Me)"がR&B83位になった。
2009年、アルバム『ラヴ』(Love)をリリース、全米114位・R&B14位を記録。"I Can't Make You Love Me"がR&B75位をマークした。
2011年10月25日、13thアルバム『TWENTY』をリリース、全米20位・R&B4位・全英63位を記録した。ここからは、 Charlie Wilsonをフィーチャーした“More Than You'll Ever Know"がR&B59位をマークした。
2012年1月5日、ボーイズ・トゥ・メンはハリウッドのウォーク・オヴ・フェイムに加えられた。
2014年、アルバム『Collide』をリリース、全米37位・R&B6位。
2017年6月24日、フィラデルフィアのブロード・ストリートのクリスチャン・ストリートからカーペンター・ストリートまでの区間が市議会によって「ボーイズ IIメン・ブールバード」に改名された。ボーイズIIメンのメンバーがかつて学生だったフィラデルフィア創造芸術高等学校は、ブロード ストリートのこの地区にある。
8月、秋に『Under the Streetlight』というタイトルの新しいアルバムをリリースすると発表された。
10月20日、アルバム『アンダー・ザ・ストリートライト』(Under the Streetlight)をリリース。日本でチャート入りした。このアルバムからは"Ladies Man"がシングルカットされた。
2018年1月4日、グループはチャーリー・プースがリリースした新曲“イフ・ユー・リーヴ・ミー・ナウ”(If You Leave Me Now)にフィーチャーされ、プースのアルバム『ヴォイスノート』に収録された。
9月6日、グループはペンシルベニア州フィラデルフィアのリンカーン・ファイナンシャル・フィールドで行われたNFLの2018-2019シーズンキックオフで演奏を行った。
10月2日、グループはABCのダンシング・ウィズ・ザ・スターズで“レディース・マン”(Ladies Man)を披露。前年リリースの最新アルバムからのこの曲に合わせてデマーカス・ウェアとリンジー・アーノルドはクイックステップを踊った。
このグループは、ナンバーワンセールスアルバム「オデッセイ」に収録されているテイク・ザットの曲“ラブ・エイント・ヒア・エニモア”の再解釈バージョンにフィーチャーされた。ハワード・ドナルドはマジック・ラジオとのインタビューで「この曲をレコーディングした時に夢を叶えた」と明かした。
12月15日、グループはフィリピンのガールズグループ「DIVAS」(カイラ、イェン・コンスタンティーノ、KZタンディンガン、アンジェリン・クイントからなるグループ)と、スマート・アラネタ・コロシアムで「ボーイズIIメン with DIVAS」と題したコンサートを開催した。
2019年9月18日、グループがABCのコメディシリーズ『スクールド』に本人役で出演すると報じられ。
9月30日、ボーイズIIメンは米国ツアーとラスベガスでの滞在から帰国後に開催されるアジアツアーを発表した。 彼らはクアラルンプール、バンコク(12月7日)、シンガポール(12月9日)、マニラなどの都市を訪問する予定。
2022年12月31日、カレッジフットボールプレーオフ準決勝でミシガン・ウルヴァリンズとTCUホーンド・フロッグスが対戦する前に、ボーイズIIメンがフィエスタボウルで国歌を斉唱した。
(参照)
Wikipedia「ネイザン・モリス」「Nathan Morris」「ボーイズIIメン」「Boyz II Men」
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