クライ・マッチョ | inosan009のごくらく映画館Ⅲ SINCE2019

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HPでの『ごくらく映画館』(2003)からYahooブログの『Ⅱ』を経て今回『Ⅲ』を開設しました。気ままな映画感想のブログです。よかったら覗いてみてください。

 イースウッド91歳、どこにもクライマックスのない映画の展開に唖然としつつも、その映画の佇まいに酔いしれるしかない鷹揚自若たる新作だ。

 それは、『グラン・トリノ』と『運び屋』でもうとっくに遺作は撮り終えているよといわんばかりの余裕の一作。老いた姿をさらけ出すことなんか気にも留めない映画の有り様。映画を楽しむその余裕。それが、若者と老雄の道行きをただただ淡々と綴るだけのこの映画に、粛然として滲み出すのである。

 だからこれは、たぶん多くの若い映画ファンにとっては、拍子抜け、期待外れ、どこが面白いのか分らない映画と捉えられるに違いない。そういう意味では、これは実にマニアックな映画なのである。『ローハイド』からずっとイーストウッドを見続けてきたオールドファンにしか味わい得ない映画なのだ。

 だからこれは、じじい映画の傑作と呼びたい。よろよろ歩くじじいの姿をみて誰が喜ぶのか、老いた姿をさらす我がロディ・イェーツよ。だがそこに在るのは、老いることにに抗わないその姿、老いてなお自我を貫き通す心意気、老熟なんて絶対しない生き方だ。それが真のマッチョたる生き方だと思いたい。

 この先イーストウッドはどんな映画を見せてくれるのだろう。大作、名作、問題作なんてなくていい。映画をとことん楽しんで欲しい。ここまで来たらもう、とことん付き合うしかないのだから。

  

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