退職代行業者が今すぐ伝えたい! Z世代が辞めたい会社

 

書店で並んでいるのを見かけると、経営者であればどうしても手が伸びてしまうようなタイトルですよね笑

 

著者は、ここ最近世の中でもよく話題になっている退職代行サービス「退職代行モームリ」を運営している方です。急に会社を辞めてしまうZ世代の社員の本音というのは、おそらく会社側が把握するのは困難ですが、退職代行業者だからこそ知りうる本当の退職理由、そこから浮かび上がるZ世代の若者たちの仕事に対する考え方などをリアルに学ぶことができますので、特に年代の異なる経営者層にとっては、そのあたりを知る良い機会になると思います。

 

今年のGW明け、退職代行サービスを使った退職が急激に増えているといったニュースが多く報道され、まだ記憶に新しいところです。「退職代行モームリ」のサイトを見ると連日、「本日〇〇名の退職確定」というインフォメーションが表示されています。世の中には、こんなにも多くの人が、退職代行サービスを使って退職をしているのか・・・、とショックを受けてしまいますね。

 

特に、私はいわゆる「就職氷河期世代」。就職したくても、どこの会社にも就職できなかった学生がとても多かった時代ですので、今のZ世代のように、せっかく希望通りの会社に入社できたのに、ほんのわずかの期間に退職してしまう、また突然出社せず、業者を使って退職してしまうということには、価値観の違いを感じずにはいられません。しかしまあ、今の時代は突然バックレて出社しなくなる若者も多いようなので、それよりは業者を使ってでも退職の意思を伝えてくれたり、間接的にでも何らかの引き継ぎがなされるのであればまだマシなのかもしれません。

 

さて本書ですが、そもそもZ世代の価値観とは、という話から始まり、入社早々に会社を辞めてしまう今どきの新入社員の心理、どれだけの人が退職代行サービスを利用しているのか、Z世代が「もう無理」と感じる企業の特徴、Z世代を長く雇用するためにはどうしたらよいのか、そして、企業側から見た退職代行サービスとの向き合い方、といった点について解説がされています。

 

退職代行サービスが昨今急激に増加している理由としては、Z世代の価値観というものが大きく関係しているというのは事実ですが、もう少し深く分析してみると、それは人口動態の大きな変化による人出不足の減少、インターネット環境の普及にともなうライフスタイルの変化など、わが国を取り巻く経済環境の急激な変化が主要因であることは間違いなさそうです。昭和の時代には、パワハラやセクハラなんていう言葉自体が存在しなかったわけですが、令和の現代では、労働環境を整備するうえで決して無視できなくなってしまいました。これに、少子高齢化にともなう人出不足が輪をかけるかたちで、労働環境の整備が遅れている企業には人が集まらない、また集まったとしてもすぐに若者が離職をしてしまう、という現象が起こっています。これは労働市場の需要と供給のバランスを考えれば当然の話だと思います。いわゆるブラック企業と言われる会社には若者が定着しませんので、企業としては生き残りをかけて労働環境をしっかり整備していかなければ生き残れない時代になっています。退職代行サービスがこれほどまでに普及してきたのも、そういった時代の流れとしては必然なんだろうと思います。

 

著者曰く

『Z世代特有の退職理由として、「新人なのに丁寧に教えてもらえないから」というのがあります。知らないことでもネットで検索すれば、正しいやり方をYouTubeが動画で丁寧に教えてくれる環境で育ってきたからか、「仕事は上司の背中を見て覚えろ!」などという昭和の時代を引きずった指導では、直ぐにやめてしまいます』

 

とのことです。

うーん、この価値観の変化は昭和生まれの経営者にとっては非常に衝撃的ですよね。しかしもうこれは自分たちがマインドを変えるしかないのでしょう。例えば極端な話ですが、鼻のかみ方だとかフーセンガムの膨らませ方とか靴ひもの結び方とか、そういったことは暗黙知的に家族や身の回りの人から教えてもらうのが当たり前だったと思うのですが、今はすべてYouTubeの解説動画がありますもんね。人に聞くよりもまずは検索してみる、といった行動習慣の変化というのは大きいですね。

 

それでもやっぱり、退職という人生の大きな決断を、業者に代行してもらうなんていうのはけしからん、と思う方も多いと思います。私ももちろんその一人です。しかし、本書を読んでみると、こういった代行サービスを使う方の多くは、企業のコンプライアンス違反(パワハラ、セクハラ、サービス残業など)が原因となっていることが圧倒的に多いようで、企業側にも大きな原因があるのも事実のようです。

 

なかには一部、「本当にやばいZ世代」の若者もいるのも事実で、それが我々のイメージする「けしからん若者」像に近いようなのですが、割合としては決して高くないとのこと。代行サービスを利用する若者の多くは、本当は自分でしっかりと退職の意思を伝えなければいけない、ということは重々承知しつつも、それができない状況に追い込まれている、ということのようです。

 

特に、労働環境の整備というのはとても重要だということをしみじみと実感しました。いわゆるブラック企業と呼ばれる会社が世の中にはまだまだたくさんあります。企業はまず、自社の労働環境をしっかりと見直すこと、これが絶対必要だろうな、と思いました。体質をどうしても変えられない会社は、時代の流れの中で自然淘汰されてしまうことになると思います。

 

『Z世代が離れていく会社の一番の特徴は、「労働条件がよくない会社」です。「逆に労働条件がいい会社って、具体的には何?」と思ったかもしれませんが、特に難しいことはなく、「サービス残業がない」、「公休をきちんと休める」、「勤務外労働がない」、「有給を正しく使える」、「入社前と入社後で、雇用条件に乖離がない」のようにいたって普通の内容になります。退職理由には、「人間関係」も多く含まれますが、2つを天秤にかけると、Z世代は「労働条件」の方に重きを置いていると分析します』

 

『Z世代は、音楽も映画もサブスク時代に生きています。気に入らない曲を最後まで聞くのは時間のムダで、指先一つで簡単に次の曲に飛ばせるわけです。そんな環境で育った彼らは、つまらない映画を最後まで付き合ってみることはしないのです。コスパやタイパが悪い会社を、サブスクに慣れたZ世代が我慢することはなく、さっさと辞めてしまうのは当然といえば当然のことなのでしょう』

 

うーん。

昭和生まれの経営者としてはとても大変な時代になってしまったなあ、という思いはありますが、そんなことは言っていられませんね笑

まずはしっかり時代の変化についていかなければいけません。そして労働環境の整備を怠ることはできない。色々勉強になります。