息子

 

前進 6回目

 

「藤川さんなら上手くやるさ。藤川さんに機会を与えてやるべきだと思います。このままではもったいない。藤川さんにならA市を任せて良いと思います」

「誰かがここA市に残らなければならない。適任者は藤川になるか」

高木は山崎を見た。

「俺は藤川さんが嫌いな訳ではない。ただ藤川さんが力を増した場合のことを心配しています」

「山崎、神戸が日本のヤクザを統一するため、全国に若い者を進出させている。そのうち関東にも出て来るだろう。俺たちはそういう所とも争うことになるかもしれない。目を外に向ける必要がある。内々のことを心配するな」

高木が目を隆一に向けた。

「いいだろう。藤川にA市を任せて見よう」

「ありがとうございます」

横浜の新事務所で龍仁会の定例会が開かれた。

「藤川はA市に行き、A市をまとめろ」

高木の言葉に藤川の顔が紅潮した。

龍仁会の構成員は五十余名である。

横浜に三十名が移り、A市に二十名が残っている。

藤川がその二十名を束ねることになる。

「どうした。受けるのか受けないのか」

「喜んでお受けします」

閑職であった藤川に再び檜舞台がめぐって来た。

 

次回は6月24日に書きます。