息子
前進 5回目
隆一が新聞を見ていると高木が戻って来た。
「隆一、来ていたのか」
「相談があるそうです」
山崎が高木に告げた。
「話を聞こう」
「代貸も一緒に」
隆一は山崎も誘った。
高木と山崎と大島は高木の部屋に入った。
「何だ。難しいことか」
高木がタバコに火を点けた。
「今度、うちも横浜に事務所を開くことになりました。貸元といっしょに代貸も俺も横浜に移ります」
「そうだ。何か問題でもあるのか」
「藤川さんにA市に任せてはどうですか」
「大島さん、それは駄目だ」
山崎はすぐに反対した。
「隆一、考えを言って見ろ」
「うちの幹部がみんな横浜に移れば、A市を見る者が必要となります。ここで名を売った藤川さんに任せるのが良いと思うのです」
「藤川さんに兵隊を預けることになる。藤川さんにその気がなくても、兵隊の中には変な色気を出す者が現われるかもしれない」
山崎は藤川にA市を任せることを危惧した。
この時点では、A市が龍仁会の本丸であった。
次回は明日書きます。