息子
組織 7回目
暮れも押し迫った日、隆一は組の事務所で新聞を読んでいた。
『ソ連、アフガン侵攻』の記事が隆一の目に留まった。
それは12月24日にソ連がアフガニスタンに武力介入したニュースである。
ムジャーヒディーンという抵抗運動の兵士がソ連と戦っていると書いてある。
記事を読んだ隆一は“暴力で問題を解決するのは国家もやくざも変わりがない”と思った。
事務所に山崎が入って来てソファに座った。
「大島、聞いたか」
「何を」
「俺たちが叩いた黒川が稲守会に入るらしい」
「どういうことだ」
隆一には山崎の言っていることが理解できなかった。
「うちと黒川は揉めていただろう」
隆一は山崎に質した。
「このままでは黒川は潰れるので本家と盃を交わすそうだ」
隆一は狐につままれたような顔をした。
「この絵を描いたのは高木さんらしい」
「えっ、高木さんが…」
「抗争を続けるよりも黒川組を取り込む方が得らしい。無駄な血を流さずに済むからな」
「そうか」
隆一はこんな所にも政治があると感じた。
強行するかと思えば懐柔する。
まったくわからない世界であった。
次回は5月27日に書きます。