貸元
三代目 8回目
栄が立ちあがった。
「帰るぜ」
源三が栄の履物を揃えた。
栄が草履を履くのを源三が手伝った。
源三の手が栄の足に触れた。
栄の体の芯が熱くなった。
「貸元、またここに来てください」
「私に来てほしいのか」
「へい」
栄は源三をどう扱えばいいか迷った。
源三の情婦でいたい気持ちと源三との関係を断ちたい気持ちが栄の中でせめぎあった。
「私の情夫になりたいのか」
「へい」
「条件がある。他の女に触れないと約束してほしい」
「へい。他の女には手を出しません」
「我慢できるかい」
「耐えます」
「いいだろう。また来る」
栄は離れから宿の母屋へ歩いた。
次回は明日書きます。