貸元

 

三代目 6回目

 

栄はゆっくり体を起こした。

「どうした」

「温泉に入る」

栄は部屋を出て露天の温泉に入った。

栄が思っていたよりも温泉は熱かった。

体を温めてから栄は水をかぶった。

身が引き締まった感じが栄を包んだ。

栄が温泉から上がると、部屋は片づけられ、窓が開け放されていた。

部屋の空気が入れ替わっていた。

昨夜の淫靡さは微塵も感じられなかった。

栄が座ってぼんやりとしていると、中居が茶を運んで来た。

「温泉に入られたのですか」

「あぁ、入ったよ」

「熱かったでしょう」

栄がうなずいた。

「お客様が温泉に入られる時、前もって水を入れ温度を下げるんですよ」

「そうだったのか」

「朝餉はどういたしますか」

「用意が出来ているなら運んでくれ。うちの若い者にも朝飯を済ますように伝えてほしい」

「かしこまりました」

栄は中居を見送りながら茶を飲んだ。

 

次回は明日書きます。