貸元

 

解体 1回目

 

宿場は与平のものになった。

与平が新しい顔役として宿場を取り仕切り始めた。

かつて笹屋の若い者であった者たちも今では与平の指示を仰いでいる。

栄の問屋場で働いていた三郎が宿場のめし屋に入った。

「ここだ。三郎の兄弟」

手をあげて三郎を呼んだのは源三であった。

「久しぶりだ。元気かい」

三郎は日焼けした顔をほころばせた。

「昨日、江戸から帰って来た」

「それじゃ、女将さんは…」

「無事に江戸に着いた。源三さんの兄弟分に世話になったよ」

「無事ならいい」

「それで姐さんの方は…」

「与平親分の目がある。少しばかり泥水を飲んでもらうことになる」

「泥水って何だい。こっちは笹屋の看板を下ろし、問屋場も明け渡したんだぜ」

「勝った奴の驕りさ」

「それで姐さんはどうなる」

「女郎として年季奉公してもらうことになる」

「おい、ふざけているのか」

「真面目な話だ」

「与平の奴を殺してやる」

「馬鹿言うな。兄弟ひとりでどうなるもんでもない」

 

次回は2月19日に書きます。