多分、コノ話の続きです


2012年5月30日、朝。

背骨の転移巣の
生検手術が始まった。

私のこれまでの人生で
最も掛け金の高いバクチである。

なにしろ、転移であれば、
5年生存率は
目一杯、楽観的に見て
0.2%。

(ある説では500人に1人、がんの自然寛解は起こるらしい)

悲観的に見れば
数万人に一人。



転移でなければ、悲観的に見て1%。

楽観的に見ると5%。


ただ、この事実を
正確に知っているのは
Q大の医療チームを除くと
私と元田だけだった。

妻を含めた家族や
友人には言えなかった。




整形外科のセンセが
麻酔をかける。

局所麻酔。

アルコール綿で背中をなでられる。

「冷たいですか?」

「まだ、冷たいです。」

実は、もう冷たくなかったのだが、
2回ぐらいウソついた。

少しでも、麻酔がよく効くようにである。

3回目、バンジージャンプから
飛び降りる覚悟で

「もう、冷たくないかもです。」

と答えた。

普通、手術の時は
ぼーっと
するクスリを入れられるのだが

この時は、例の脊髄の件があるので

何も入れられず

非常に意識はクリアである。

看護師さんにオシリ見られてる

とか

どうでもいいことが、気になる。

背中で何かが起こり始めた。

感触は全くない。

そのうち、センセが

「ハンマー」

と言った。

いよいよ、骨の掘削開始である。

「ガンッ、ガンッ、ガンッ」

骨に直接振動がくる。

意に反して、痛くない。

センセが

「痛いですか?」

と聞いてきたので

「少し」

と答えたら、麻酔を追加してくれた。

そのうち、センセが

「ペンチ」

と言った。

お前は大工か?

と心の中で突っ込んでたら

「グリッ」

これが痛かった。

「うぎゃ」

って言ったら麻酔を追加してくれた。

とにかく

「ハンマー、ペンチ、ハンマー、ペンチ、ハンマー、ペンチ」

の繰り返しである。

ちなみに、
ペンチ
のほうが痛い。

「ハンマー、ペンチ」
を十回ほど繰り返したら

どうも終わったらしい。

「もう、痛くないですからね。」

背中では術後の洗浄作業をしている。

洗浄作業が終わった頃。

「なにい、出ない?」

とセンセが怒り始めた。

私はうつぶせに寝ているのだが、

アタマの真上で怒っている。

「出ないなら、イイじゃねえか」

と心の中で突っ込む。




センセは私の背中に手を置き、

「大目玉さん、がんが出ないので、
もう一度、お願いしていいですか?」

私は

「出ないって、良性のモノに
見えるってことですか?」

「いやぁ、普通の細胞しか
見えないらしいんですよ」

と、センセ。

「なので、もう一度」

私は心の中で

「さっき、もう痛くないって、
言ったじゃん(泣)」

でも、私はオトナなので、ミエをはって

「どうぞ、お願いします」

で、また、
ハンマー、ペンチ
が始まった。

相変わらず、
ハンマー
の時は、骨に直接

ガンッ、ガンッ。

ペンチ
の時は、

グリッ、うぎゃ

である。

で、静かになった後、また頭上でセンセが怒りだす。

まだ、がんは出ないらしい。

「だから、出ないならいいじゃねえか(心の声)」

今度は、センセ、PHに

「黒幕先生、呼んで」
(黒幕先生は、執刀医のセンセの上司、多分)

2~3分後、PHが鳴る。

「ナニイ、黒幕先生がいないーーー???

「PHは?PHも出ないーーー???」

「誰か、走って探して来いーーー(怒)」

センセのテンションは最高潮である。

ところで、

出たら、死刑確定

出なければ、執行猶予

である。

私は、悪の帝国に捕らえられているのだ。

骨の中のヤツが良いモノなら、助かる。

悪いモノなら、殺される。

悪の親玉、黒幕先生が来るまでに

2セット

ハンマー、ペンチ

グリッ、うぎゃ

をやられた。

合計4セット、終了したところで、黒幕先生が現れ

頭上で、執刀センセと話している。

「先生、どうしますか?出ないですよ。」

黒幕先生が

「しょうがない、ヤメにしようか」

終了した。

勝った、かも?

にほんブログ村 病気ブログ がん・腫瘍へ
にほんブログ村

↑クリックしたらきっと、アナタ勝ちます。
(だから、いったい何が?)