コノ話の続き

さ て と

だいぶ、追い詰められたね。

書きたい話が沢山ありすぎて、
逆に何から書けばいいかわからない。

まず、書いとくべきは
余命三ヶ月と言われたこの時期、
オレは全く諦めてなかった。

ゲームは始まったばかり、
人生のこの局面をおおいに楽しむ。

胸を張り、笑顔で

って毎日思っていた。

「看護師さんに、体調はどうですか?」

って聞かれたら

「最高です。」

って答えるようになったのは、この時期から。



ただ、負けたら死んじゃうわけだから、
中の良い友人には電話した。

見舞いに来てくれた。

みんなに感謝しているけど、

強烈に覚えているエピソードを2つ。

田中(本人の強い希望により偽名です)

電話したら、

「忙しいから後でいい?」

って言う。

「おお、いいよ。
長話になるかもしれんから、
暇な時に電話して」

って、言った。

コイツは海上保安官。

公務員のくせにパチンコ狂い。

運動神経が超良くて、

特別なんとか隊に
選ばれそうだったのに

「キツイから」とか

「パチンコが打てなくなるから」

とか言って

お断りしたらしい。

「海猿みたいになれたんじゃねえの?」

って聞いたら、

「あんなのキツイさーー」

って沖縄弁で言ってた。

今はその運動神経を、

全てパチスロの目押しの為に使っている

という素敵なヤツである。

消灯後に電話があった。

オレは個室だったので、消灯後でも電話には出てた。

説明した。

「どうも、転移もあるらしい」

ということも伝えた。

田中は親父さんを
食道がんで亡くしている。

転移というのが、
何を意味するかもわかっていた。

「悪い冗談じゃないよね?」

って何回も言ってた。

夜中まで話した。

ヤツが勤務するのは、宮古島。

尖閣諸島に最も近い。

対中国の最前線である。

二日後の昼には、田中は病室に来た。

仕事はサボって来たらしい。

日本国の海上警備はどうなるんだ?
 
 
 

「よう、いらっしゃい。」

かなんか、オレは言ったと思う。

もう、会った時から田中が泣いているのだ。

絶対に泣かない、
って歯をくいしばって
我慢しようとする田中。

でも、涙が溢れる。

泣く。

泣く。

オレがもらい泣き。

ん?





これは、ものすごく嬉しい経験だった。

オレは母親から生まれた。

みんなそうだけどね。

人は生まれ落ちた時、
母親だけが本当の味方だ。

母親だけは、
オレが死刑囚になっても、
強姦魔になっても、
味方してくれるだろう。

泣いてくれるだろう。

母親から生まれ落ちた後、
少しずつ人は仲間を獲得していく。




ここにオレの仲間がいた。



仲間がいるんだ

って思った。

オレは生きてるんだ

って思った。

まだまだ、生きてやるぞ

って思った。


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