※ネタバレします

 

何かの記事を見てちょっと興味が湧いたので、すずめの戸締りを見てきました。

新海誠の作品は秒速5センチメートルから見てますが、端的に言うと今回の作品はちょっとがっかりでした。

君の名はから続く「新海誠ディザスターシリーズ」の中でも特におもしろくない。

震災がテーマなのはわかるけど、そのテーマに重きを置きすぎてるのか、キャラクターも物語もまったく魅力が無い。

いろんな材料をぶちこんだけど、出来上がったものはめちゃくちゃ味の薄い具の無いスープ、みたいな感じ。

 

なぜこんなにおもしろくないのかを考えるといろいろ要素は出てくるんですが、私がこれをおもしろいと感じられなかった一番大きな要素は、

 

キャラクターのバックボーンが無さすぎること。

 

かなーと思いました。

・すずめ → 震災で母を亡くした

・メインの男キャラ(印象無さ過ぎて名前覚えてない) → 閉じ師(災害を抑える役目を負った一族?)

・おばさん → 嫁き遅れ過干渉おばさん

 

この三人がメインキャラだと思うんですが、薄っぺらすぎて魅力を感じられない。

震災がテーマの割には、すずめの震災に対して思うところがあまり描かれてないので、なぜ地震にそこまでこだわるの? というのがわからない。

男キャラは特に考えることもなく閉じ師をやっているように見えるし、苦労や苦難の跡が見えないし、閉じ師しながら教職者を目指してるのも意味わかんない。

日本中を旅しながら閉じ師してるのに、赴任地域から離れられない教職者になろうとしてるのが意味わからない。

そこに関する葛藤が描かれてるでもないし、ただの思考停止マンに見える。

おばさんはなんかこう、すずめが家を出ることに罪悪感を抱かせないための材料として作られたただの舞台装置って感じ。

十数年のわだかまりが一瞬でなかったことみたいになるの解せぬ

 

こんな感じで、キャラクターたちの特徴があんまりないし、なぜそうなってる? なぜそれを選んだ? に納得のいくようなバックボーン(根っこ)が全く無いので、情報が定着しない。だから名前も覚えてない。

メインキャラの声が俳優ばかりですしね……

本当にヘタクソで、男キャラの方はもう徹頭徹尾首尾一貫してヘタクソで。

 

この映画で一番印象的だったのは、神木くん演じる芹沢というキャラクターが出てきたときに「やっと声優きた!」と思ったところですね。

スタッフロールで芹沢が神木くんだったというのを知って、まじか、となりました。

まぁ神木くんとて声優さんと比べたら上手くはないですよ。

でも出かかりの声優さんよりは上手いと思うんですよね、本業じゃないのに。

アウェーの現場で精いっぱいがんばってる感があるというか、声優やるのも好きなんだろうなって感じがするから全然違和感ないんですけど、それ以外の俳優がやってるキャラは……私は認めたくないですね。

プロがいるのにプロに頼まないって、手抜きしてるのと同じだと思うんだけどなぁ。

予算の問題でこうなったとしたら、無名の若手でもいいから声優を本職にしてる人に頼んでほしい。

本当にがっかり。

 

おもしろいと思ったシーンは、東北に向かう途中、芹沢が丘の上から見た景色を「ここからの景色ってこんなに綺麗だったんだ」って言ったのに対し、すずめが「これが……綺麗!?」って言ったところですね。

ここ、キャラクターの視線の先の映像が無いのでよくわかんないんですが、おそらく震災(津波)で被災した場所のことだと思うんですよ。

被災してない人からしたら綺麗な景色、被災した人からしたら凄惨な景色、同じ位置から同じ景色を見てもまったく違う受け取り方になるというのはおもしろい手法だなと思いました。

 

刺さったシーンは、要石(ダイジン)がすずめに拒絶されてしおれてくシーンと、要石に戻るシーン。

男キャラが要石になったということは、要石は人間が元になっている(人身御供)ということだと思うので、おそらく昔この役目を負った(負わされた)子供がいたんだろうなぁ、というのが読み取れると、すごく切ない。

誰かの犠牲の上に平穏な暮らしがある、というのは東京の地震を止めたときの描写と併せて伝えたかった事なんだろうと思う。

 

が、その犠牲となるメインキャラが薄っぺらすぎて、全然かわいそうだと思えない

 

むしろ要石にスポット当てた方がよっぽどおもしろいものができたと思う

 

キャラクターに悲壮感がなくて、行動に結びつく動機が見えなくて、淡々として感情が見えないのはやっぱり演者の問題もあると思う。

バックボーンがない上に表面も薄っぺらい演技では見てる人に何も残せないよ。

本当に本当に残念。作り直した方がいい。

ただ、仮にすごいうまい声優さんがやってても、物語も何を伝えたいのかよくわからないので、たぶん私にはひっかからなかったと思う。

震災で被災した人とそうでない人で印象変わるんだろうか、私は関東で物資とガソリンがないなーくらいの被害だったので被災の実感ってないんですよね。

わかる人にだけ届けばいい、というのであれば、わからない人には駄作と感じるのが正常なのかも。

あとなんか、配慮なのかもしれないけど、ものすごく描写も表現も婉曲になってると思う。

そのせいで分かりづらいし、わからないところを想像で補おうと思えるほど興味も惹かれない…

絵は綺麗だけど、絵が綺麗なだけなので、絵が綺麗というのが評価ではなく侮辱のような印象。

 

 

新海誠の作品の私の好み的には

 

言の葉の庭>>>秒速5センチメートル>>>>>>>>>>>>君の名は>>>天気の子>>>すずめの戸締り

 

って感じです。

秒速5センチと君の名はの間に超えられない壁がある。

言の葉の庭までは『ありそうで意外とないけど有りうる』恋愛と成長と葛藤がテーマだったので、日常の中のほんのり非日常という自分と地続きの物語だと感じられました。

 

なんですが、君の名はから急に災害と超常現象がセットになって、メインの男女がクライマックスで離ればなれ→最後に坂道で再開というテンプレになったんですよね。

君の名ははまだよかったです、二人の結びつきが強いのに納得のいく描写が続いて、電車で互いを見つけたシーンで「出会えろ!」って思えた。

天気の子は、なんだかんだ闇の深い作品だったと思う。

最終的に社会や他人を犠牲にしたものの、社会や他人はそれを受け入れていった、というのが社会風刺感があってうまいこと表現したな、という感じがあった。

言の葉の庭がすごくよかったのと同じで、雨の描写がすごくきれいだから、天気の子の絵の美しさはかなり気に入ってる。

どうにもならない現実が続いて無力感を覚えるから見てて陰鬱な気持ちになるけど。

 

すずめの戸締りは、エピローグがプロローグのような印象。

ここから話始まるんじゃないの? という感覚。

あれを元に12話のアニメ作ったらおもしろいと思うんだよな、閉じ師と要石にスポットあててさ。

でも神木くん以外(元々声優の人は除く)は声優にしろ。

話を詰め込みすぎたのか、エピソードがぶつ切りで、壮大なあらすじを見ているようでした。

少なくとも、映画館で見るほどのものではなかったかな、私には。