頭痛と肩こり、それに伴う吐き気 | 大阪弁天町の漢方薬局「廣田漢方堂薬局」のブログ

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40代 女性

 

寒暖差の強い場所で勤務することがあり、左の肩こりが非常に強くなる時には、頭全体を締め付けるような頭痛とそれに伴う吐き気が発生する。

 

痛み止めを服用すると効果があるが、常用するのが怖いので漢方で何とかしたいとのこと。

 

体格は中肉中背で、よく食べ、顔色は煤けて暗く、口唇もやや紫がかり、全体的に血色はよくない。

 

普段からの運動習慣はなく、代謝が落ちて脂肪がついるような印象がある。

 

睡眠不良、浅眠、多夢などの傾向はなく、仕事がかなり忙しく、精神的ストレスがあるものの、イライラしたり、落ち込んだりといった情緒の不安定さがあるわけではなく、ただただ忙しい毎日を慌しく過ごしている。

 

二便も正常。

 

舌は暗紅色でやや乾燥、腫脹。

 

舌は乾燥傾向であるものの、口渇や咽乾が強くあるわけではなく、咳や痰、鼻水、目ヤニなども気にならず。

 

 

まぁ、こんな感じ。

 

そのほかにも情報は多々あるが、病態把握の参考にはあまりしなかったので以下省略。

 

 

40代も後半になれば、自身の生き方がモロ身体に反映されてくる。

 

血色も然り、肩こりや頭痛も然り。

 

平素の運動不足によって循環器系、とくに毛細血管系は萎縮し、末端隅々に新鮮な栄養・エネルギー・酸素系を巡らすこともできなくなり、筋肉の柔軟性は落ち、硬くなって動きが悪く、それが硬結になってスムーズな動きを妨げたりし、その問題の集約が肩こり等の不快感につながってくる。

 

もちろんそういう場所は老廃物もたまる。

 

つまり動静脈の循環不良が起こる。

 

不快感が生じると交感神経系の過興奮から過緊張につながりやすくなるし、毎日忙しく過ごすことも、それに拍車をかけてくる。

 

そうすることによって血管系が収縮しやすくなって、さらに血流が悪くなると今度は攣縮したりして、自発痛につながってくることも十分に考えられる。

 

この女性の場合は、上述のような考え方に基づき、処方を組み立てる。

 

顔面気色は煤けて暗く、舌も暗紅色で末端における静脈血が停滞し、新鮮な動脈血が巡っていないことを想像する。こういう場合には桂枝茯苓丸が常用されることも多いだろう。

 

また循環器を中心として、動脈血流をよくするなら冠心Ⅱ号方などが良く使われるのではないかと思う。

 

 

しかし今回の症例では、左と右で明らかに肩こりの程度が違うこと、静脈血の停滞を是正したところで、慢性的な運動不足による動脈血循環能力の低下があることから、桂枝茯苓丸(自分が考えるにこれは静脈系を掃除する駆瘀血剤)ではなく、さらに動脈血流を改善する冠心Ⅱ号方でもなく、左右差をなくし、満遍なく動脈血を巡らせる作用のある補陽還五湯の方がよりスピーディーに症状改善につながるだろうと考え、同処方を選択。

 

頭痛には血流のみならず、血管の過緊張や攣縮が関与している可能性を考えて、活血作用があり、舒筋活絡作用のある中草薬を1種類加味。

 

さらに自覚症状として口渇・咽乾はないが、舌の乾燥傾向から陰虚傾向ありとし、交感神経興奮の体質を持っていることから、体質的緊張傾向をほぐすために滋陰至宝湯を選択。

 

痛み自体がマシになれば、その時点で併発する吐き気もでなくなるだろうと、吐き気に対する配慮はしなかったが、滋陰至宝湯を使用することによって副交感神経系が活性化される側面もあるため、胃腸系のトラブルもこれで起こりにくくなるだろうと考えた次第である。

 

 

この処方を2週間使用することによって、忙しく過ごしたとしても頭痛・肩こり・吐き気が出現することなく、快適に過ごすことができるようになったとし、同処方を継続することになった。