機能性ディスペプシアもう1例 | 大阪弁天町の漢方薬局「廣田漢方堂薬局」のブログ

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20代 関東地方の男性

 

新型コロナウイルスの影響もあり、こちらに来て直接相談することのは得策ではないと判断し、特例で初回から電話相談。

 

当初は剥脱性口唇炎の漢方相談ということで最初はそのための漢方を処方したが、2回目の相談時に胃腸の調子が悪く、もともと機能性ディスペプシアを患っているので、そちらの漢方に切り替えてほしいという希望があり、主訴を切り替えることとした。

 

胃腸は消化不良感はそこまで強くないものの、胃もたれやゲップ、胃重感などがあり、調子のよいときと悪いときの波があるという状況だった。

 

電話相談であったため、体表観察をすることができず、いまいち病理のメカをきちんと掴むことができなかったが、舌では膩苔などなく、水滞が関与している可能性は低いこと、脹舌で舌は全体的に張っていたため、気滞傾向があること、またやや淡紫舌で瘀血傾向があることなどから、気滞と瘀血が胃腸に影響を与えている可能性が高いと判断した。

 

胃の調子は良くないものの、小腸や大腸の異変、つまり便通異常などはないことから、広範囲にわたってフォローする必要なく、あくまでも心下の気滞血瘀を改善させればよいと判断し、前回の症例と同じように四逆散をベースに処方を組み立てた。

 

今回の症例では四逆散に少量の芍薬甘草湯、また枳実と厚朴の薬対を用いて、より気滞に対して処置をしておいた方が良いと感じたため厚朴単味エキス剤を加味。御多分に漏れず、機能性ディスペプシアでは必須の折衝飲と三稜莪朮製剤を併用し、服用していただくこと2週間。

 

本人はもうすっかり治ってしまったかと思うほど、調子よく過ごせており、胃もたれやゲップ、胃重感などが激減して快適に過ごせているということであった。

 

剥脱性口唇炎はあまり変化していないが、胃腸の調子が良いのでとてもうれしいということだった。このまま同処方を1か月程度継続し、調子が良ければ、改めて剥脱性口唇炎の漢方療法に切り替えるかどうかを検討することになった。

 

機能性ディスペプシアもかなりいろいろな症例を経験しているが、昨今の人間は運動不足、ストレス、食べ過ぎで胃腸の血流が悪く、そのせいで気滞や水滞が生じ、結果として、胃もたれ・消化不良・ゲップ・呑酸・胃重感・胃痛などの症状を引き起こすようになっているのではないかと考える。

 

それに対し、アコファイドなどの神経系を調節する薬では、神経を調節して筋肉の運動を改善しようとするものの、筋肉が動くための栄養・エネルギー・酸素また老廃物の排泄に深く関与している体液・リンパ・血液の循環を調節することができないので、全く効果がない症例があると考えると理解がしやすくなる。

 

残念ながら西洋医学には血液循環動態、瘀血や活血といった意識に乏しいので、それが原因で症状が出ている人たちには、あまり奏功しないのだろうと考えている。しかも薬学を専攻していれば、各薬物は血液循環の流れに沿って患部に到達する物質なのだから、患部局所の血行不良があれば、その分、血中濃度も低下し、効き目が減弱することも容易に想像できるはずである。

 

だから漢方療法を行い場合でも、たとえ瘀血所見がなかったとしても、患部の血行を促進し、四逆散などの主薬が患部に届きやすい環境を作ることで、より切れ味鋭い薬効が発揮できると考えている。

 

まぁ、こういう考え方が中西医結合和漢薬学理論の一端でもあるわけだ。

 

でも実際、効いている人が多いのだから、教科書的にはそんなこと言われていなくとも、臨床上、それが正解なのである。