西洋医学の弱点 ~寒熱という概念~ | 大阪弁天町の漢方薬局「廣田漢方堂薬局」のブログ

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中医学では八綱弁証という基本中の基本の弁証にも「寒熱」という概念がある。

 

しかし西洋医学にはこの寒熱の概念が一切ない。炎症としての「熱」の概念はあるが、それ以外においてそのような意識はない。

 

だから例えば、非細菌性膀胱炎や炎症のない胃炎類似症状に対しての治療法を持たない。

 

最近の例では、全身の血液循環動態に異常があり、舌と膀胱に血液が渋滞し、それによって熱が発生し、その熱によって炎症を起こし、舌炎や膀胱炎となり、一方では胃腸の血流が虚血状態になっているために消化不良・胃もたれ・食欲不振などを呈している60代の女性や胆管炎のために2か月余りの絶食を余儀なくされ、体重が20kg近く落ち、陰虚からの虚熱で口渇・口苦・咽乾・胃炎・消化不良・胃もたれとなった機能性ディスペプシアの70代女性。

 

前者の60代の女性には、尿に細菌が一切認めらないにもかかわらず、膀胱炎の「炎症」は細菌が原因とし、抗生物質を使用。機能性ディスペプシアの女性には胃炎症状があるからと体重が過度に減少し、骨密度が著しく低下するリスクがあるにもかかわらずPPI製剤を使用したり、漢方では寒熱が全く逆である六君子湯や補中益気湯を処方し、陰虚からの虚熱に拍車をかけるようなことを行っていた。

 

このように寒熱という中医学では基本の概念がないがゆえに、患者に生じている症状からその病態を詳細に類推することができず、内服治療ではことに当てずっぽの処方になることが往々にしてあるように思う。

 

そしてこれらの女性は長年同処方を服用したにもかかわらず、一向に症状が改善せず、それを医師に何度訴えても処方を変えてくれないことから諦め、当方のような市井の漢方薬局に相談に来られるのである。

 

これに対し漢方では、舌炎・膀胱炎・胃腸障害に対し、心虚熱・脾気虚として清心蓮子飲を、機能性ディスペプシアの女性には脾胃陰虚・虚熱として甘露飲・桔梗石膏・クマザサ製剤(竹葉として)を使用し、それぞれ症状が軽減している。

 

西洋医学はこのような「熱」のみならず、冷え症や虚寒、実寒といった部分に対しても全く配慮がない。

 

『傷寒論』では一般的に下したり、下痢したりすると裏の陽気および津液が虚し、内外における気血津液にムラが出て、そこから多彩な症状が出ることを示してくれているが、例えば胃腸炎になり、頻回の下痢に見舞われた場合、それらの回復期には真武湯などを上手に使いこなして裏寒が長引かないようにする配慮が必要となる。その配慮によって回復が早くなり、通常なら7日間程度かかる胃腸炎でもうまくいけば2,3日で治すこともできる。

 

というように、西洋医学は意外なところに弱点を持っているのだ。