マインドマップを活用した読書感想文の書き方指導(2) 【モチベーション編】 | 一歩一歩 前に前に(小学生バレーボールチーム 矢口タートルズVC)

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夏休み中ではありますが、学校では補習教室という場を設けて子どもたちが勉強しに来ています。一昨日は私がその担当で、4年生クラスについていた時の出来事です。

Rさんという女子が参加していました。前日に配布していた国語のプリント集を家に忘れてきてしまったということで、算数のプリント学習が終わった後、教室にあった本を、
「この本は良い本だから、読んでみるといいよ。」
と紹介し、貸したのです。本の題名は「Little DJ 小さな恋の物語」です。小学校4年生が読むには簡単な本ではありません。中学生が読んでちょうど良いくらいの本です。私は(ちょっと難しいかなぁ・・・・でも、Rさんならきっと読むだろう。)と思って渡しました。

Little DJ―小さな恋の物語
鬼塚 忠
ポプラ社

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他の子どもたちの学習を支援しながら、ちょいちょいRさんが読んでいる姿を見ていました。すると、どんどんページをめくっているのです。その速さは、まるで「フォトリーデング」をしているかのようでした。(フォトリーディングについては、こちらのサイトを参照してください。)

30分ほどしてRさんが私のところに来て、
「先生、読み終わりました。」
と言うのです。驚きと、まさかという疑問の気持ちも出てしまった私は、
「えっ?本当に読めたの?う~ん、ならばどんな内容だった?」
といじわるな質問をしてしまいました。

ところがRさんは全編の内容をすらすらと話したわけです。

「この本の内容は、中学生の男の子が主人公で、家族は野球の選手になってほしいと思っているんだけど、実は本人はそうではなくて、DJをやりたかったの。その子が病気になって、入院するんだけど、その病院でDJをやってね、夢を実現するっぽい内容で、入院している女の子とも仲良くなっていったりするんだけど、最後には亡くなってしまうの。」

まったくその通りです。本当に読んでいました。素晴らしい!小学校4年生でもこれだけの読書力を持っている子がいるんですね。


「どうしてそんなに速く読めるの?」
と聞いてみると、
「私は本を読むのが大好きだから、いつも読んでいるんです。だからパッと見れば大体の内容は分かるようになりました。」
と答えてくれました。

つまり、本を理解するための必要要素である「全体の5%」の重点情報を的確にキャッチする能力を自然のうちに身につけてしまったようです。

これだけの読む能力があれば、次は感想文の書き方を丁寧に指導してあげれば、たちまち文章力を伸ばしていくに違いありません。


「本を読むのが好きになること」
これが身につけば、感想文を書く高い壁もかなり下がってくることでしょう。




本好きにすることに関しては、私が職場の若手に伝えてきたことが何らかの参考になるかもしれません。

私の職場の若手は本当によく本を読んでいます。しかし、大学を卒業して新たに教員になった当初には、あまり読書をすることがありませんでした。そこで私は帰りの電車でいっしょになった時や、お食事を一緒にする機会があった際に、若手教員の読書熱を上げるべく、次のような話をよくしました。

「教師の必読書は教育書ばかりではないよ。たとえば『水滸伝』という中国の歴史小説を読んだことがあるかな。これは学級経営にすごく参考になるんだよ。
水滸伝には梁山泊っていう山賊集団の物語なんだけど、このトップに立つのが宋江という、ごく普通の人だったんだ。
ではなぜ宋江が個性の塊である梁山泊のメンバーを統率できたかというと、彼が人の長所を見抜く名人だったからなんだ。
人間という生き物はね、自分のことを知ってくれる人にはとことん着いていくんだ。小学校の学級も同じだよ。子どもたち全員の個性を認め、一人一人が活躍できる場を与えていくことができれば、梁山泊のような集団になれるんだ。
『水滸伝』は教師の必読書だよ。そしてこれは20代の若い時期に読むかどうかで、40代になった時に大きな差となって顕れるから、必ず読むべきだよ。」

新・水滸伝(一) (吉川英治歴史時代文庫)
吉川 英治
講談社

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純粋な我が職場の若手教員はすぐに水滸伝を読んでくれました。そして、こう話してくれました。

「歴史小説がこんなに教師に役立つものだったとは驚きでした。水滸伝を読んでいると、自分が宋江になったような気がして、学級担任をすることがワクワクしてきます。」

「一人一人を活躍させるには、よく観察するということが大事なんですね。」

「みんなに理想を持たせることって大事なんだと分かりました。それから、水滸伝を読むことで読書をする楽しさを味わうことができました。これからはいろんな本を読みたいと思いました。」


つまりですね、周りにいる人たちの「心の熱」を上げるような働きかけをできるかどうかが教師の力なのだと思う訳です。

アメリカの教育者であるウイリアム・ウォードの有名な言葉に、次のようなものがありますね。

「凡庸な教師は、指示をする。いい教師は、説明をする。優れた教師は、範となる。偉大な教師は、内なる炎に火をつける」


子どもたちの心に「内なる炎」をつけることができれば、読書のモチベーションは簡単にあがることでしょう。

どうすれば良いかって?
はい、それはまさに「水滸伝の宋江」に学んで下さいませ
大人も努力しなくちゃね