「悪問」と受験生(2) | 「お受験」問題ー子どもの「気持ち」-

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 受験のさまざまな問題について、皆さんと交流できればと思います。ご父兄・生徒さんにはあまり知られていない問題を取り上げたいと思います。
 なお、「傾向と対策」「学校情報」(進学率など)は基本テーマになりませんので悪しからず。

(前項 の続き)


 第二の問題は、合否が偶然に左右される部分が大きくなることです。

 もともと、「悪問」の正解は運に左右されます。

 例えば、選択問題の場合、どれが正解か分からないが、たまたま「ア」を選択したら当たったということになります。

 このような「悪問」によってミスが許されない状況が生まれ、受験生が強い緊張を強いられることは、前回、述べました。

 皮肉なのは、そのような緊張に耐え、受験生がミスを減らした結果が、「悪問」の影響力や数などの増大をもたらしかねないということです。

 前回、例示した(1)「100点満点」で、(2)「悪問」が「10点」、(3)合格ラインが「65点」のテストで考えてみましょう。

 まず、受験生が頑張ってミスを減らせば、合格ラインは上がります。

 例えば、合格ラインが「75点」になることもあり得ます。

 この場合、100点満点のうち失点できる余地は「35点」から「25点」に減ることになります。

 「25点」の内、「悪問」が「10点」ですから、「悪問」の占める割合が40%を占めることになります(「10点」÷「25点」=0.4=40%。合格ライン「65点」の場合は約28%)。

 とすれば、実力では「70点」しか取れなかったとしても、たまたま「悪問」10点が取れたとしたら、得点「80点」で合格できることになります。

 つまり、「悪問」が「10点」のままでも影響力は増すのです。

 その上、合格ラインが上がれば「悪問」の数が増加する可能性があります

 「止まらぬ入試問題の『劣化』」(第3回)で述べたように、大学側は合格ラインを一定の得点以下に抑える必要があります。

 前記の例で言えば、合格ラインを「75点」から「65点」に戻さねばなりません。

 この際、手っ取り早いのは「悪問」を増やすことです。

 このテストの場合、「悪問」を「10点」から「20点」に増やせば、合格ラインを「10点」程度、下げることは可能でしょう(尤も、後述のように満点に占める「悪問」の点数比率が20%というテストは稀とは思いますが、暫し、この例での説明を続けます)。

 そして、合格ラインが「65点」で「悪問」が「20点」出題されたとすれば、失点(「35点」)に対する「悪問」の割合は約57%に及びます(「20点」÷「35点」≒0.57≒57%)。

 「悪問」以外の問題は「60点」しか取れなかったのに、「悪問」がたまたま「5点」取れたため、得点が「65点」になり合格できたといった例が出かねません。

 一方、「悪問」の「20点」を全部落とした場合、残る「80点」で合格ライン「65点」を取らねばなりません。

 失点の余地は「15点」しかありませんから、極めて厳しい立場に追い込まれます。

 尤も、「悪問」の認定基準によりますが、前述のように、満点のうち「悪問」の得点比率が20%を占める入試問題は、さすがにレアケースではないかと思います。

 しかし、「止まらぬ入試問題の『劣化』 」で述べたように、「悪問」によって合格ラインを下げる手法自体は常態化しているとみられます。

 そして、-私の担当科目のうちで言えばー特に「日本史」の場合、「悪問」とみられる問題の正誤が合否のポイントになりつつあると感じます。

 実際、「こんな問題、どう解いたらいいんですか?」「これ、どこの参考書に載ってるんですか」といった受験生の声はよく聞きます。

 彼らがよくこのような質問をするということは、すでに「悪問」が看過しえない合否のポイントになりつつあることを示していると思います。

(この項、続く)