ここ1ヶ月半は時間があればショパンコンクールの予備予選に始まり、終わった直後、ほぼ間髪入れずスタートしたエリザベート王妃国際ピアノコンクールを一次ラウンドから聴いていました。
仕事は仕事でそれなりに忙しかったのですが、日常生活がワルシャワ時間やブリュッセル時間に寄ってしまい、睡眠時間が犠牲になる日も。
それほどLIVEで聴くコンテスタントの演奏が素晴らしかったのです。
中でも心奪われたのは、エリザベート王妃国際のファイナルで久末航氏が演奏したブラームスのピアノ協奏曲第2番。
ブラームスがイタリア旅行から帰国した直後にインスピレーションを得て、1番の協奏曲から20年以上経って書いた曲。荘厳な部分もありつつ、ブラームスにしては明るい曲調の協奏曲です。
Live自体は6月1日の早朝でした。
ホルンの旋律への伸びやかな伴奏から始まるのですが、直後の低音の深みのある音色が心に響き、最後まで聴くことを止めることが出来ませんでした。
派手に鳴らすといった華やかさはないけれども、どこまでも深みのある丁寧な久末氏の演奏は、作曲家が曲に込めた構造美への意図や思いへの尊敬の念が感じられ、慈しみに満ちた雰囲気を創り出していました。
作曲家の思いと、演奏家とオーケストラの個性を、指揮者が絶妙なバランスで融合させ、まるで黄金比を探り当てたかのような美しい音色が生まれる瞬間を、私はこの演奏に何度も感じました。
久末氏の演奏を知ったのは2021年のショパンコンクールでしたが、穏やかな音色で丁寧な演奏をする方であるとの印象でした。
今回のエリザベート国際では、セミファイナルのベートーベンのピアノソナタ熱情の力強い演奏といい、協奏曲の1楽章冒頭と2楽章の低音の迷いのない芯のある響きといい、物静かな人が時折見せる情熱に似て、特に強く惹きつけられました。
公式サイトやベルギーのメディアで配信されていたフルバージョンが今やっとYouTubeでも聴けるようになったので、多くの方がこの感動的な演奏を耳にすると良いなあと思います。