物心ついた頃から半世紀近くフィギュアスケーティングを見続けてきた。

昔は想像出来なかったが、テレビ放送始めインターネット等の映像がどんどん進化し普及して、いつでもどこでも好きな選手の好きなプログラムが見られるようになった。
…なんて、贅沢な世の中になったのだろう。

日曜の昼下がり、そんな感慨に浸りつつ、渡部絵美さんや、伊藤みどりさんが孤軍奮闘していた頃から較べて、格段に層の厚くなった日本人選手の活躍を堪能する。


みどりさんが活躍していた若い頃は、技術の進化に高揚感を得ながら見ていたものだが、最近は年を取ったせいか、シャイな日本人の表現力の進化が楽しみで見るようになっている。


今日、私が惹かれた可憐な花。

宮原知子さんの表現力に、今日は心揺さぶられる。

高いスケーティング技術を誇りつつ、どこか控え目なキャラクターで、表現力はまだまだこれから伸びていくであろう楽しみを感じさせる少女だ。

今日はミスの少ない彼女にしては珍しく、ルッツジャンプで転倒があった。

けれどもリストの練習曲の、穏やかな入り江の、ほんの小さなさざ波を思わせるようなメロディラインが、普段おとなしげな彼女の中から、静かながらも確かな情熱を引き出しているように感じられて、私はこのプログラムがとても好きになった。

浅田真央さんより上に行きたい、と言っているこの少女の誠実な努力が、いつか大輪の花を咲かせるように、と、

ついそんなことを感じながら、彼女の“ため息"を眺めていた。