幼子とともに、じゃがいもだけで耐えていたあの頃。
ひとりよがりの感情に翻弄されながら、恋に耽溺していたあの頃。
いかようにもならぬ他人の感情をつなぎとめるために、気の遠くなるような暴力に耐えていたあの頃。
痛みに耐えるために、感じることを忘れていたあの頃。
ただ生きる場所を得んがために、仕事に耽溺していたあの頃。
心がうんともすんとも言わなくなってしまっていたあの頃。
ついに万策尽きたと思い煩い、紐をかける太い枝ぶりの木を探し求めていたあの頃。
病に倒れ、初めて生への執着の強さを思い知ったあの頃。
すべては愛の種を蒔くために必要だった学び。
なぜならば、愛はそこにただあるものではなく、種を蒔き、育て続けていくものだから。
それは、ひたすらに生きるための水脈を探しあて、井戸を掘り続ける仕事に似て。
そしてやがて肉体が土に還るとき、私は魂をそらへと還すだろう。
この星にのこされた肉体を持つ人を照らす、光のほんのささやかな一粒。
そういうものに私はなりたい。