引っ越しの荷造りの最中、ついうっかり釘で引き裂いてしまった…


引き裂いたのは、右手の掌側の人差し指である。

 最初は何が起きたのかわからなかった。だが目を遣ると、右手の人差し指からドクドクと血が流れている。
畳に落ちるポタッという血の音を聴いたとたんに鈍い痛みが来た。

 流水で血を洗い流したあとにローズマリー入りのジェルで消毒し、まじまじと傷を見た。

 いかにも「引き裂かれた」感じの傷口だった。
手で開けたスナック菓子の袋口のいびつさに似ている。

 傷口からは無事だった肉が見えており、ここまで傷が入っていたら、多分救急病院行きだったろうな…と、ボンヤリ思う。



 ふと、怒涛のように荷造りや梱包をして、部屋の収納スペースの至るところから物を出しては捨てていたここ二週間の事が頭を過った。

 何かと気の散りやすい私が、何かにとりつかれたように黙々と半日以上作業をする。
珍しいことだとは思っていた。


 だが、この怪我で何となくその意味がわかったような気がした。


「まあ、したいと心から思えて、バイタリティのあるうちはしっかりおやんなさい」


何か大きなものからの働きかけで、私は毎日一日半日以上の時間を集中して費やせたのかも知れない。


 気付いたら、両手を振り絞って動かす重いものはもうそんなにはなかった。


 起きた事はただ起きた事で、それそのものに良し悪しはない。

様々な心のフィルターをかけ、その現象に色を付けて見ているのは人間だ。
だから私たちは見ているようで見ていない。

 怪我は痛くていやなものだが、こういうものは常に生活の身近に潜んでいる。
 この怪我はせっかちな自分には予め組み込まれたものであり、多分毛の先程の予感めいたものがあって頑張ってこれたのかも知れない。

 まあ、こうでも思っておかんとね、やってられんのよ…


 指の怪我で面倒なのは、水仕事だ。
 夕べ、少し時間を置いて傷口をじっくり乾かした後に絆創膏を取り替えたのだが、歯磨きの時にうっかり両手を洗ってしまった…アウアウッ(T^T)