【3からの引用続き】
玄侑:ああいう、飼い慣らせるはずのない龍を飼ってた。
プルトニウムを再利用するMOX燃料を使ってるわけですよね。
プルートーって何語でしたか、「地獄の王」っていう意味なんです。
だから、人間って地球の上に仮住まいしてたんだなって、今回瓦礫となったものを目の当たりにして強く感じた人は多いと思うんです。
仮住まいするにしても仮住まいの作法があるんじゃないか。
吉岡:その下にしかも龍がいる。
玄侑:そう。仮住まいで龍が飼えるのか、というね。
吉岡:われわれの表現力、想像力、夢というのは、仮住まいの中で見てきた表現力、想像力、夢だという。
それをもう二段も三段も大きくしていかないとね。
われわれ人間の世界でもどうやって組み立て、再生していくのか、生き直していくのかというのが見えないな、という気が本当にしますね。
玄侑:今回の経験をして、私はよくお葬式の時の時にもよく言うんですが、
人が一人亡くなったんだし、もし死に甲斐があるとすれば、周りの人がどれだけ変わったかということしかないわけですよ。
あなたが死んでも誰も何も変わらなかったというのは、最も死に甲斐がないじゃないですか。
これだけ大量の人々が亡くなったわけですから、どれほどの変化をわれわれがするかということが今問われている。そのための材料は無数にあります。
それと、想像力を働かせるということです。
吉岡:それがないと、何も得たことにならない。この経験を組み入れたことにならないと思いますよね。
玄侑:きっと変わると思いますよ、この国は。
そこは肯定的に、明るく思っている。
吉岡:そこはね。そうですね。
* * *
古(いにしえ)より春を心待ちに暮らしてきた三春町。
玄侑さんが住職を務める福聚寺は、樹齢450年とされるしだれ桜をはじめ、300本を超える桜の名所として知られている。
桜守(さくらもり)の村田春治さんは、40年にわたって三春の桜を育ててきた。
昨年寺の桜から種を取り、裏山に植えた。
土地を見守る桜の跡継ぎ。
太い根を張るには種から育てるのが一番、と村田さんは言う。
村田「それも桜。3本か、4本を残して。」
吉岡「出てきたのを間引くのに今が一番いい季節なんですか?」
村田「もうそうなんです。」
吉岡「土はいい土なんですか?」
村田「いい土だよ。」
吉岡「大丈夫なんですか、放射能は?」
村田「大丈夫だ。千年目標にしている。移植したやつは駄目なんだ。だから、それを考えて、ここで実生(みしょう=種から育てる)でやって成長させないと駄目なんだ。」
玄侑「村田さんはね、この土地に根っこを生やしているから強いんですよ。
実生みたいなもんですよ。」
これからもこの地で生き続けようと決めている二人。千年の桜が枝を張り、花を咲かせるその時を楽しみにしている。
* * *
3月30日、国道114号線を北西方向に急ぐ車列があった。
赤宇木の避難所を脱出した人々だ。
犬を連れていた池田夫妻は熊本の実家に戻り、総勢は8人。
向かう先は二本松市東和町に設けられた避難所だ。
避難所に入る前、8人はスクリーニングを受けた。衣類などに基準以上の放射能が付着していれば避難所を汚染することになるからだ。
「服も全体的にちょっと高い。洗濯してもらったら下がると思いますので。なるべく早目に着替えてください。」
「水で洗浄して…」
末永善洋さんは、靴と右手に基準を超える放射能が検出され、除染を受けることになった。
赤宇木の集会所では携帯電話が通じず、末永さんは電波事情の良い場所まで度々出歩いていた。
8人は自分たちが2週間以上にわたって暮らしていた場所の危険性を改めて知った。
結局、末永さんは靴を処分し、身体を洗って、基準を満たすことができた。
8人が向かったのは東和町の文化センター。浪江町の避難民の受け入れ窓口になっている。
(分厚い名簿をめくっている様子)
町民の安否情報の名簿だ。
佐藤さん「うちの母がどこに行ってるかなと思って。」
末永さんは、自分自身が行方不明扱いになっていることを知った。
末永さん「探してるって、俺のこと。俺、死んだか何だかで探してんだと。」
「携帯のかかんないとこにいたから。放射線の一番(強い)、飯舘の3、4倍もするとこにいたから。」
8人は同じ体育館にまとまって暮らすことになった。原発周辺住民の流浪の生活がいつ終わるのか、誰にも分からない。
【テロップ「原発災害の地にて 対談 玄侑宗久・吉岡忍」】
出演: 玄侑宗久 吉岡忍
語り: 渡邊あゆみ
取材協力: 木村真三 七沢潔
撮影: 北西英二 服部康夫
照明: 福富明
音声: 名越大樹 森下正一
映像技術: 八木淳
音響効果: 高野寿子
編集: 樫山恭子 榎戸一夫 吉岡雅春
取材: 大森淳郎
ディレクター: 梅原勇樹 池座雅之
制作統括: 増田秀樹
(終)
【引用終わり】
玄侑:ああいう、飼い慣らせるはずのない龍を飼ってた。
プルトニウムを再利用するMOX燃料を使ってるわけですよね。
プルートーって何語でしたか、「地獄の王」っていう意味なんです。
だから、人間って地球の上に仮住まいしてたんだなって、今回瓦礫となったものを目の当たりにして強く感じた人は多いと思うんです。
仮住まいするにしても仮住まいの作法があるんじゃないか。
吉岡:その下にしかも龍がいる。
玄侑:そう。仮住まいで龍が飼えるのか、というね。
吉岡:われわれの表現力、想像力、夢というのは、仮住まいの中で見てきた表現力、想像力、夢だという。
それをもう二段も三段も大きくしていかないとね。
われわれ人間の世界でもどうやって組み立て、再生していくのか、生き直していくのかというのが見えないな、という気が本当にしますね。
玄侑:今回の経験をして、私はよくお葬式の時の時にもよく言うんですが、
人が一人亡くなったんだし、もし死に甲斐があるとすれば、周りの人がどれだけ変わったかということしかないわけですよ。
あなたが死んでも誰も何も変わらなかったというのは、最も死に甲斐がないじゃないですか。
これだけ大量の人々が亡くなったわけですから、どれほどの変化をわれわれがするかということが今問われている。そのための材料は無数にあります。
それと、想像力を働かせるということです。
吉岡:それがないと、何も得たことにならない。この経験を組み入れたことにならないと思いますよね。
玄侑:きっと変わると思いますよ、この国は。
そこは肯定的に、明るく思っている。
吉岡:そこはね。そうですね。
* * *
古(いにしえ)より春を心待ちに暮らしてきた三春町。
玄侑さんが住職を務める福聚寺は、樹齢450年とされるしだれ桜をはじめ、300本を超える桜の名所として知られている。
桜守(さくらもり)の村田春治さんは、40年にわたって三春の桜を育ててきた。
昨年寺の桜から種を取り、裏山に植えた。
土地を見守る桜の跡継ぎ。
太い根を張るには種から育てるのが一番、と村田さんは言う。
村田「それも桜。3本か、4本を残して。」
吉岡「出てきたのを間引くのに今が一番いい季節なんですか?」
村田「もうそうなんです。」
吉岡「土はいい土なんですか?」
村田「いい土だよ。」
吉岡「大丈夫なんですか、放射能は?」
村田「大丈夫だ。千年目標にしている。移植したやつは駄目なんだ。だから、それを考えて、ここで実生(みしょう=種から育てる)でやって成長させないと駄目なんだ。」
玄侑「村田さんはね、この土地に根っこを生やしているから強いんですよ。
実生みたいなもんですよ。」
これからもこの地で生き続けようと決めている二人。千年の桜が枝を張り、花を咲かせるその時を楽しみにしている。
* * *
3月30日、国道114号線を北西方向に急ぐ車列があった。
赤宇木の避難所を脱出した人々だ。
犬を連れていた池田夫妻は熊本の実家に戻り、総勢は8人。
向かう先は二本松市東和町に設けられた避難所だ。
避難所に入る前、8人はスクリーニングを受けた。衣類などに基準以上の放射能が付着していれば避難所を汚染することになるからだ。
「服も全体的にちょっと高い。洗濯してもらったら下がると思いますので。なるべく早目に着替えてください。」
「水で洗浄して…」
末永善洋さんは、靴と右手に基準を超える放射能が検出され、除染を受けることになった。
赤宇木の集会所では携帯電話が通じず、末永さんは電波事情の良い場所まで度々出歩いていた。
8人は自分たちが2週間以上にわたって暮らしていた場所の危険性を改めて知った。
結局、末永さんは靴を処分し、身体を洗って、基準を満たすことができた。
8人が向かったのは東和町の文化センター。浪江町の避難民の受け入れ窓口になっている。
(分厚い名簿をめくっている様子)
町民の安否情報の名簿だ。
佐藤さん「うちの母がどこに行ってるかなと思って。」
末永さんは、自分自身が行方不明扱いになっていることを知った。
末永さん「探してるって、俺のこと。俺、死んだか何だかで探してんだと。」
「携帯のかかんないとこにいたから。放射線の一番(強い)、飯舘の3、4倍もするとこにいたから。」
8人は同じ体育館にまとまって暮らすことになった。原発周辺住民の流浪の生活がいつ終わるのか、誰にも分からない。
【テロップ「原発災害の地にて 対談 玄侑宗久・吉岡忍」】
出演: 玄侑宗久 吉岡忍
語り: 渡邊あゆみ
取材協力: 木村真三 七沢潔
撮影: 北西英二 服部康夫
照明: 福富明
音声: 名越大樹 森下正一
映像技術: 八木淳
音響効果: 高野寿子
編集: 樫山恭子 榎戸一夫 吉岡雅春
取材: 大森淳郎
ディレクター: 梅原勇樹 池座雅之
制作統括: 増田秀樹
(終)
【引用終わり】