(…昨日見た夢のつづき)


“STAIRWAY TO HEAVEN”-- Led Zeppelin





「ここでワークをします!!!」

私は叫んだ。


 99階の木の梯子から3m程離れたところに、白いコンクリートの階段はある。


3m。
微妙な距離だ。


 助走を10m程付けた走り幅跳びか、三段跳びならラクに渡れるかも知れない。
立ち幅跳びだとビミョウである。
勿論、その基準は私である。

 私は深い奥底を睨みながら、白いコンクリートに一番近い、木の梯子の先端に立つ。


「…さあ、かかって来なさい。」


…???


…どうやら最近の若い人に、「かかって来る」、という言葉は通じないらしい(-"-;A

「私を乗り越えて、白いコンクリートの階段を上って教室に入って下さい。」
気を取り直してアルカイック・スマイルで伝えるが、迫力は半減する。

別の眩暈が私を襲った。


先ずいじめの筆頭に立っている、と思しき生徒がすぐに身構えた。


ふふっ。判りやすいラブラブ


その娘は、私をあざ笑うかの如くに木の梯子の助走路を、バレエジャンプしたり、回転したりしながら、私に向かって来る。


はっきり言って、恐怖は最高潮である。


まともにぶつかれば、私が落ちるのは確実である。
私は堪らず目を瞑った。




そこで、雷のような音が鳴り響いた。




「うるさいわっっ!!!」




…我が娘の声だった。


かくして私は汗びっしょりになって目覚め、夢のあとさきはわからずじまいなのであった…





お昼ごはんを済ませた後、私は改めて娘に尋ねてみた。

「今朝私は寝言を言いよったんかね?」

娘は一瞬鼻で私を笑った後、答えた。


「うん。…もうめっちゃ、うるさかった。」

「そーなん?」

「そりゃそーさ、隣で、『10分も』寝言言われてん?きもかろーもん。うるさいって思うさ。」

「えぇ?そんな長く寝言を言いよったん??(笑)」

「うん。そんな事しょっちゅうやけん、この際ちょっと考えたがいいよ。
これじゃ、絶対男は出来んね。男は寛げんけん?

 
再来月に19になる娘の発言である。
カレシがいる人間だけに説得力がある。
しかも冗談ではなく、かなり真面目な口調で言い放たれた事に、私はショックを受けてしまった。


この瞬間、私の脳裏にはピーヒャラヒャラと笛の音が過ぎり、かくして本日の音楽とタイトルが決定した。


…娘の最後通牒とも言えるこの一言に、その日、三度目の眩暈を覚える私なのであった。



天国への階段は、まだまだ遠い…