お父さん、

もしも一瞬、死を超えることができたなら

あなたとともに歩き、あなたの歩みを感じながら

私の心は慰められるでしょう




一日の終わり

八月の太陽が沈んでいくとき

仕事に疲れ

毎日のあれこれに疲れたお父さん




そんなあなたの、ささやかな楽しみ

私から見たら

ほんとうにつまらない気晴らし

なのに一日の終わりに

それは私の心を自由にしてくれた




あなたが育てた花、そして庭

あなたはカラカラに乾いた土に

生命を与えた

あなたの大事な小鳥、そしてその翼

神さまが創った、飛ぶいのち




私たちはほとんど話さなかった

お互い心を開くことも

お父さん、もしあなたと歩けるなら

私は心から打ち明けます

私にはまったく理解できなかった

あなたの怒りが

あなたの苛立ちが

あなたの苦しみが

でも、そんな混乱のただなかで

私は恵みだけをいただきました




なぜならあなたは

私を心の旅に向かわせてくれたから

生きる意味を

愛の意味を、そして人生の意味を

求め、探し出す旅に




私はあなたの後ろ姿から学びました

そして私はあなたの心から

旅の答えをたくさん受け取りました

あなた自身は理解できなかったとはいえ




あなたは黙って

私を世話し、看護し

導いてくれました

あなたの心と手によって

私のスピリットは

かたちづくられたのです




私はかよわい繭のなかで

争いごとから守られて

心の声に耳を澄まし

いのちの意味を知りました




ですから、お父さん、今宵ともに歩きながら

私はあなたに私の心を差しだします

私たちの絆は、もう決して

悲しいものにはならないでしょう




なぜって、過去はもう時のかなた

私は過去にさよならしたのですから

お父さんも私も、お互い

せいいっぱいだったとわかっていますから




そして私は心のなかで

丘のいただきに立ち

あなたに手を振ります

時空の旅人であるあなたに




光に包まれ

愛と安らぎとゆるしに満ちた

あなたの家族と出会うために

あなたにいつも豊かな恵みがありますように





~ ダイアン・シリンシオーネ ~



【ジェラルド・G・ジャンポルスキー著
大内 博=訳
「ゆるすということ(サンマーク文庫)」
より引用】


 今月25日は父の19回忌です。

 以前の日記に書いた事がありましたが、父と私は和解する事なく、死に別れました。

 私は3歳の頃から、既に「死」というものは常に「生」の対極にあるものではなく、人生の至るところに内包されている、

そのような感覚を持って生きてきました。


 それはおそらく、自分が産声を上げぬ未熟児で死を懸念されながら、早くこの世に生まれ出た事への漠然とした違和感とともに、
父がお酒の席で、散々人々を喜ばせ笑わせた後に、
「俺は死にたい」
と、酔いに任せ頻繁に口にしていた事が大きく係わっていたように思います。


 もちろん幼い当時の私が、そのような思いを語れるわけはありません。

 ただ、言葉に出来ぬこの世のはかなさへの思いは、もの心ついた頃から既に内包しており、

そして、その感じかたは様々な形を取り、私の肉体の外にも現れておりました。


 それは、苛酷なレイプ体験であったり、
父からの暴力や、父方の本家での厄介者扱いされた体験であったり、

子供の父親からの気絶寸前の暴力であったり、小中学校や、大人になってからのハラスメントであったりと、実に様々です。
 
 22歳の時には自殺未遂をしました。
 
 虚無感の中に、すべての感情が死んでしまう体験もしました。
 
 ある時には悲哀不能の中、職場から家路を歩きながら、無意識に枝ぶりの良い木を見つけては、
「あれにロープをかけ、首を吊っても折れないかな…」
と、考えていた事もあります。


 しかし、世界はそれでも私が、愛を受けながら生きていけるサインを常に発信し続けてくれました。

 それは、幼子の当時に荒れていた父親以上に私を愛おしんでくれた神戸の伯父や伯母であったり、
さりげなく“Let it be”にレコードの針を落としてくれ、共に遊んでくれた従兄弟や、
灘区のとある変電所のある坂道を下ったところにある明石焼きの美味しい店のおばちゃんだったり、
遊び仲間に入れてくれた近所の子供達や、やさしい大人達であったりしました。


そして、自分の人生に気付きと学びを与えて下さった数々のメンターの方達との出会い。

その方々は、私に心を見つめ、整理するきっかけを作って下さいました。


今、ひとつ言える事は、

「私の人生に無駄な事など何一つなかった」

ということです。


 なぜならば、私は、自分の人生で体験した全ての事の意味が既にわかっているからです。


次のお墓参りには、父にこの事を報告しようと思います。