昨晩、ファミマの近くで、自転車に乗った若い男性から、突然声をかけられた。

「あのーすいません。」

久し振りにスーツ姿でヒールを履いて歩いていたので、一瞬ナンパかっ?と思う。

いい歳をした中年オンナが、フツー考えるか~?

…すぐにアタマの中で打ち消し、
「はい?」と、振り返った。

「あの~、この辺にファミマありますか?」

ファミマは男性の背後にあった。

ひょっとして、これは…、

「新手のナンパかっ???」


…イタイ中年オンナの妄想である。

だからぁ、お前は年頃の娘を持つ母親なんだってば。
再びアタマの中で打ち消した。

「そこの横断歩道を渡られて、真っ直ぐに行かれると、すぐありますよ。」

「あ、わかりました。ありがとうございます。」

男性は真面目に、ファミマの前を通り過ぎていた事がわかっていなかったのだろう。



私たちにはバイオリズムがある。

自分の調子が良いか、そうでないかの物差しや、サインは人それぞれだと思う。

私の場合、心身共に調子が良いと、何故か何人もの人に、途(みち)を訊かれる。

私は歩くのが昔から好きだ。
歩く時に、音楽があると尚良い。

バブル期の若かりし頃、お立ち台にわざわざ昇ってまで踊っていた80年代のディスコ音楽は、
意外にも、歩くに持ってこいの程良いテンポだったりする。
マイケル・フォーチュニティや、リック・アストリーの曲は、その代表格だ。

閑話休題。

職場が博多駅と中洲の間のビミョーな場所に位置する商業施設にあった頃、
私は西方面にある家までよく歩いて帰っていた。
1時間半程の道程である。

商業施設を出てすぐに、韓国人や中国人に途を訊かれる事がよくあった。

多い時は立て続けに3組。
みんな博多駅の場所を尋ねて来るのだった。
しかも比較的途を教えやすいワシントンホテル側ではなく、
博多駅からは遠くに離れた側のグランドハイアット正面玄関前で。。。

私の貧弱な英語力では教えられそうもない、と、諦め、博多駅の見える通りまで共に歩き、
「あれです」
と指差す。

これを立て続けに3回した時にやっと、
自分もそのまま博多駅から地下鉄に乗ればよかったものを…と、思う私なのであった。


1時間半の帰り道では、最高で5回、途を訊かれた。

そのうちの1人は車をいきなり横付けにしてきて、現在地とは全く別の場所の途を尋ねてきた。
現在地は、「歩き専科」で車に縁のない人間にとっては、信号の数をすぐには答えられない位遠い場所だ。
仕方がないので標識の地名を伝え、そこから左折し真っ直ぐに行けば良い、と、教えた。

深夜近くに商店街を歩いていて、
明らかに泥酔直前の年下女性に声をかけられた事もあった。

「姐さん、姐さんってばあ…」
と、いきなり背中を叩かれるなり、
「一緒に呑みましょ?」
と、声をかけられた。

「大丈夫なん?家はどこ?」
と、尋ねると、私の家より遥か遠くのまちの名前を言う。

危なっかしくて、一杯なんていう状態ではない。

仕方なく、近くのファミレスに入り、酔い醒ましをしてもらう事にした。

少し酔いが醒めたところで彼女が、身の上話を始めた。

ここには詳しく書けないが、かなり深刻な家庭環境に彼女が置かれている事はわかった。

まあ、そらお酒の一杯でも飲みたくもなるわな…と、素直に頷ける程、深刻な話だった。

無事に帰り着いたら、先ずは眠って、酔いがスッキリと醒めて、
少しでも心が軽くなっているといいけど、と、祈る事位しか出来ない。

だって彼女の人生は、彼女しか生きられないものだから…


またある時には、青年に声をかけられた。

6年前の事だ。

タッタッタッタッ…と、後ろから誰かが走って来るな、と、思ったあっという間に、
私はその青年にガシッと両手を掴まれたのだった。


「おねおね…おねーさん!」

「はい~!?」

…マヌケな返答である。
ビックリしたからだ。

「僕と、×○※△(自主規制)して下さい!!!」


その夜、私は裸眼で歩いていた。
その日は研修もなく、一日中パソコン仕事をしていて目が疲れていたからだ。


ガシッと掴んで離さない肌色の両腕の真ん中に、何故かもう一本の肌色の棒のようなものがあった。


手を振り解こうとした拍子に、私の手は、その真ん中の肌色の棒に触れた。

う~???

…手よりも熱いんですけど(^^;

背中から汗がドーッと流れ出す。


だが、両手を掴まれているうちに、私は段々と腹が立って来た。
そして、彼に尋ねた。

「アンタ、歳はいくつね?」

「…20歳です。」

私は益々腹が立ってきた。
そして、思わず怒鳴り付けた。

「アンタッ!オバチャンより半分も年下やないねっ!」

必殺「逆サバ攻撃」(※当時36歳)を繰り出す。

私はここ数年のワッカモンの年上好きには辟易していたのだ。

離婚男性の特徴の一つとして、「相手の女性に『母親』を強く求める」というものがある。

正直なところ、やめてぇぇぇ!と思う。

私は相手の男性にとってはただの人間で、ただの女性であり続けたいのだ。

以下、青年への説教は続く。

「アンタねぇ、
ハタチでま~だ若いとに、街なかでなんてことばしよーとね?

…アンタは、そげん事をするために産まれてきたんね?

…そやなかろーもんっ!!!」


青年は完全に手を緩めた。
やっとの事で私の手は自由を取り戻せた。

青年の顔をよく見ると、涙が頬を伝っていた。


私は声色を変えた。
出来る限り穏やかな声でこう言った。

「…ホントは自分でもわかっとーやろ?
自分はこげん事する為に産まれてきたんやないって。」

青年はコクン、と、頷いた。


「…たいていの事はね、落ち着いて考えたらわかる事なんよ。
あなたには、その考える力があるんよ、わかるかね?」

いや、ホントはわからん事はいっぱい出てくるんやけどね…歳を取る毎に。

言おうとしたが、やめた。


コクン。


「よし。そしたらね、これからはこういう事をしたらイカンよ。」


コクン。

「よし。」

私たちはハグをして別れた。


ハグした直後に、私はある重大な事に気付いたのだった。

「ファスナーあけっぱなやん。」


…まあ、後の祭りである。
ってかシュンとしていたし…
イヤ、シュンとしていた筈(もはや切実な願望…)

これで青年が改心したのなら…
ま、いっか。


それからも毎度の如く、私は歩いて帰った。
いつもの帰り道を、時には道を変えて、同じペースで、サクサクサクサクと歩いて行く…。


近所のファミレスの前。いつもの風景。

ある日の夜、
そのファミレスの向かいに立った電柱に抱き着き、
盛んに体を上下させている男性がひとり。


ゲッ!

…あの夜の青年だった。

アイタタ…

まあ、
「人からモノへ」とターゲットを変えた点はよしとしよう。

これはこれで成長だし、進化だ。
(進化なのか?)

まあ、
「コンクリートから人へ」をあっさりと反古にした「どこぞの政党」と比べりゃ、
まだまだカワイイもんですわ(-.-;)