あの難しいジャンプが凄い、あの変わった形のスピン、ステップが美しい、等々、
部分的に素晴らしい演技は数多くあるけれども、
プログラムのすべてが印象的なものは、それほど多くはない。
この日の坂本花織の演技は、間違いなく後者のそれだった。
一瞬一瞬を深く味わい、慈しむかのような演技。
どの部分を切り取っても、そこには美の女神が寄り添っていた。
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ジャネット・リンの札幌五輪から、幼いながらもフィギュアスケートに惹かれ、長年見続けてきた。
フィギュアスケートの魅力は、何といっても高い基礎力に裏付けられたスケーティング技術から生まれる型の美しさ、
そしてそれが奏でられる楽曲に自然と融合する瞬間そのものだ。
今朝のミラノ・コルティナ五輪のフィギュア団体戦の男子ショートプログラムでは、
鍵山優真が"ジャンプの神"と称されるイリア・マリニンに10点差をつけ1位となった。
氷を撫でるかのような滑らかなスケーティング技術、ジャジーな音楽に融けあうダンサブルな演技。
彼もまた、瞬間瞬間を深く愉しんで生きていた。
坂本花織、鍵山優真、ともにスケーティングの基礎力を高めていった先に、感動的な氷上芸術を花開かせたのだ。