ひとつ前の当ブログに、2019年の大河ドラマ『いだてん』でチュートリアル・徳井義実さんが女子バレーボールの大松博文監督を演じていたことに触れました。「申告漏れ」という不祥事を起こした徳井さんでしたが、ピエール瀧さん→三宅弘城さんのような「撮り直し」はなく、そのまま出演となっていました。

「東洋の魔女」を率いた大松博文監督を演じたといえば、僕なんかは当然『おれについてこい!』(1965 堀川弘通監督)を思い出します。「東京オリンピック1964」の翌年に封切られたこの作品、タイトルになった『おれについてこい!』(←著書が原作でもあります)の言葉で有名な大松博文監督を演じたのがハナ肇さんで、5キロ痩せて取り組んだだけに雰囲気がよく似ているし、熱演でした。

また、主将・河西昌枝さんに扮したのは白川由美さんです。白川さんは1年仕事を休んだあとの復帰作で、実際に河西さんから回転レシーブの指導を受けるなど役にうちこみ、その甲斐あって、劇中もちゃんとバレーボール選手に見える熱演でした。

映画は、チームの様々なエピソードがうまく使われています。いよいよ決勝の当日、試合会場に向かうバスの中、すっかり緊張してしまっている選手たち。「歌でも唄え!」と監督が言ってもダメ。

そんな重い空気の中で、白川さんが「あ、あんなのまだやってるんだ!」とバスの窓から『ウエストサイド物語』(1961 ロバート・ワイズ監督)のポスターを指さします。実は、猛練習に明け暮れる日々で選手の体力、精神の疲労がピークになって、選手代表が監督に「1日練習を休みにしてください」と直談判(この時、「団結」と書いたハチマキしているのが面白い)、監督もOKして、皆で観に行ったのが『ウエストサイド物語』だったのです。大松監督も行ったのですが映画館の中で爆睡……こんな思い出話でバスの中の緊張はほぐれるのでした。

いよいよ試合開始でコートに入場していく選手たち。そのあと、ゲームのシーンはなく、ボールがひとつポツンと置かれた控室が映され、そこに勝利のアナウンスが流れ、チームの戦績がテロップが入るラストも素晴らしいです。

たった一日の「練習休み」に直談判するほど、休みなしの猛練習をしていた「東洋の魔女」たち。今だったら、「宝塚歌劇団」の過剰な練習、公演日程のように問題になってしまうところでしょうか。(ジャッピー!編集長)