「国語文法」では動詞を

五段活用
上一段活用
下一段活用
カ行変格活用
サ行変格活用


の5つに分類するけれど、

「日本語文法」では

グループ1(五段活用)
グループ2(上一段活用、下一段活用)
グループ3(カ行変格活用、サ行変格活用)


の3つに分類するというところまで書いた。

ちなみに、「国語文法」と違って「日本語文法」の方は、用語が教科書や参考書、教師によって少し違ったりする。「グループ1」を「1グループ」と呼んだり、「1」が「Ⅰ」だったりすることもあるみたい。「3つのグループに分類する」という点は統一されていると思う。

日本語を母語としない人が学ぶ「日本語文法」では、動詞を学ぶ時、「~ます」の形を最初に習うのが一般的。ほとんどの日本語の教科書でそうなっていると思う。日本語を母語とする人は、家族と話しながら習得するので、最初に覚えるのは「~ます」ではなく、幼稚園や学校に入ってから「~ます」を使うようになる人が多いのではないかな。

日本語学習者が最初に「~ます」の形を習うのは、最も安全だから。日本語を外国語として「学習」する人の多くは、学校や職場で使うために学んでいるので、そういう場面でいちばんよく使われていて、相手に失礼にならず、トラブルを起こしにくいのが「~ます」の形。クラスメイトや同僚と話す時にはやや他人行儀に感じられてしまうこともあるけど、その「違和感」より、先生や上司にタメ口で話してしまった時に起こるかもしれないトラブルの方が重大なので、まずは「~ます」の形を学ぶということだと思う。

「~ます」を学ぶと、「~ません」「~ました」「~ませんでした」も順に学ぶわけだけど、ここまでの学習では、どのグループでも同じように変化するので、グループ分けは必要ない。この「グループ分け不要」も、「~ます」を最初に学ぶ理由の1つかもしれない。

おそらく最もポピュラーと思われる日本語教科書「みんなの日本語」(初級1が1課~25課、初級2が26課~50課)で、初めてグループ分けを学ぶのが14課。「~てください」「~ています」などの文型を学ぶ。他の教科書でも、「動詞」というものを確実に理解して、定着してからというタイミングでグループ分けを学ぶようになっていると思う。

 

それまで

食べます
飲みません
書きました
買いませんでした

を学んできた学習者は、「食べてください」という例文だけを教えてグループ分けを教えないと、

×飲みてください。
×書きてください。
×買いてください。

という文を作ってしまう。だからグループ分けを教えないといけない。

日本語母語話者も「国語文法」で動詞のグループ分けを学ぶけれど、これは単に分類を学ぶだけ。母語話者は分類の仕方を知らなくても、「飲んでください」「書いてください」「買ってください」のように自動的に正しく変形できる。でも、日本語学習者はそれができないので、グループ分けを理解して覚える必要がある。

「国語文法」では、「後ろに『ない』をつけた時、その前が『アの段』になる動詞は五段活用」のように習うことがあると思う。「食べます」を「~ない」の形にすると、「食べない」となり、「ない」の前は「エの段」の「べ」だけど、「飲みます」は「飲まない」になり、「ま」は「アの段」なので「五段活用」となる。これは、わかりやすい見分け方だけど、母語話者にしか通用しない。何も知らない学習者は普通に「食べます→食べない」なら「飲みます→飲みない」とする。これが「飲まない」になるのだと教えるのが日本語教育。

自分も、養成講座に通っていたころはこの感覚がいまいちわからなかった。「母語話者なら無意識に自動的にできてしまうことを、どうしてそうなるか仕組みを理解してそれを学習者に伝える」というのが日本語教師の仕事。しかも、国内の日本語学校では「日本語を日本語で教える」スタイルが多いので、これがまた難しい。普通の人が思うより、ずっと奥が深く、専門知識や技術のいる仕事。