何日か前、X(Twitter)で「英語ネイティブの友人に『"spring"って、春、ばね、泉と、いろんな意味があるか難しいよね』みたいな話をしたら、『え?全部同じじゃん』と言われた」みたいな話が流れてきた。ネイティブにはどれも「ポン」とはねるようなイメージが共通しているから同じ単語でも違和感がないということらしい。これ、前に何かで聞いたことある。「ラジオ英会話」だったかなぁ。こういう「イメージ」というのは、ネイティブでないとピンと来ないものだから、その言語の学習者が捉えるのはなかなか難しい。英語の「spring」は「はねる」イメージだけど、日本語の「春」の方は、「張る」イメージらしく、やはり言語によって違うということだと思う。

 

 

 

 

外国語を学ぶ時、最初のうちはどうしても「spring=春」みたいに1対1で対応させて覚えてしまう。英語を学ぶ中学1年生とかはこれで良いと思う。でも、英語にしても日本語にしても、そして多分他の言語でも、単語というのはそれぞれ元に「イメージ」があって、ネイティブではない人にとっては無関係に見える複数の意味を1つの単語が持っている場合がある。初級の後半か中級に差し掛かる頃にこれに気づいて、訳語だけでなく単語の持つイメージを意識するようにすると、その後の伸びが違うのではないかと思う。

 

 

ここ数年、NHKの「ラジオ英会話」を聞いてるんだけど、サブタイトルが「ハートでつかめ!英語の極意」となっているように、単純に「こういう時はこういう言い方をする」という風に説明するのではなく、「この単語はこういうイメージを持っているからこういう文で使う」のように、「なぜそうなるか」を説明してくれるので非常に興味深い。それまで自分がフワフワした感覚として持っていた内容を言語化してくれるような感じ。まぁ、ちゃんとテキストを買って勉強してるわけじゃなく、聞き流してるだけなので、全部を理解してるわけじゃないとは思うんだけど。

 

 

大西先生は、よく「toは矢印」みたいなことを言ってる。「go to(場所)」の「to」も、「want to(動詞)」の「to」も、ネイティブにとってはどちらも「矢印」のイメージだ、みたいな。たしかに「矢印」と考えると、「want」「decide」「hope」等はto不定詞で、「enjoy」「finish」等は動名詞を使うということも説明がつく。「go to」の「to」と「want to」の「to」では、後ろに来る品詞も違うし、訳した時も違う言葉になるから、同じイメージを持っていることに気づかない人は多いような気がする。

 

 

前置詞のイメージについて、辞書によってはイラスト等で解説が載っているものがあるので、そういうのを見てみるのも良いと思う。

 

 

 

 

中学でto不定詞を学ぶ時、名詞的用法、形容詞的用法、副詞的用法のように用法を分類することがあるけど、これもネイティブはあまり意識してないんじゃないかな。同様に、現在完了は継続、経験、完了のように分けて学んだりするけど、これもネイティブは意識していないのかも。ちなみに大西先生は現在完了について「今に迫ってくる」というのをよく言っていると思う。たしかに、このイメージを持つと納得できる部分がある。

 

 

「そうなの!?経験と継続、全然違うじゃん!」と思うかもしれないけど、日本語にも「形は同じだけど意味が違う」というのはあるんだよね。パッと思いつくのは「~ている」という表現。

 

(1)

今、ご飯を食べています。

その時、本を読んでいました。

 

(2)

学校の前に男の人が立っています。

鍵が閉まっています。

 

(3)

電車で学校に行っています。

毎朝ウォーキングをしています。

 

(1)は所謂進行形。動画、アニメーションのイメージ。(2)は(1)と違って動きはない。静止画のイメージ。(3)は繰り返し。こんな感じで、「~ています」にはいろいろな使い方があるけど、多分、「普通の日本語ネイティブ話者」はあまり意識せずに使ってるんじゃないかな。これを外国人に「『~ている』はいろいろな意味があって難しいね」と言われても、「そう?」てなる人は多い気がする。

 

 

あとは、「に」。「会社に行く」と「仕事に行く」の「に」を、日本語母語話者はどちらも同じものとしてあまり意識していない気がするけど、「会社」は場所で「仕事」は場所ではなく「すること」なので、使い方が微妙に違う。「スーパーに野菜を買いに行く」と言った場合、「スーパー」は名詞で「買い」は動詞だけど、どちらも後ろに「に」がついている。でも、おそらく多くの人がそんなことは意識していなくて、どちらも単に「~に行く」のイメージで使っているのではないかと思う。

 

 

名詞だと、「目」という単語。

 

1.目が青い

2.目が赤い。

3.目が大きい

4.落ちくぼんだ目

5.目が悪い。

 

この5つ、指してるものが全部違う。

 

1…瞳の部分

2…白目の部分

3…1と2を合わせた部分

4…3の周りのまぶた等も含んだ部分

5…視力

 

みたいな感じになると思う。「目」なんて本当に基本的な単語で、幼児が最初の段階で覚えるものだと思うけど、こんな風にいろんな意味がある。まぁ、基本的でよく使う単語ほどいろいろな意味を持っているというのはどんな言語でも共通だと思う。動詞などの変化する単語の場合、不規則に変化することも多いし、「基本的で小さい子供で知っているから」ということで侮ることはできない。

 

 

 

日本語教師養成講座に通っていた時、受講者の誰かが「『冷たい』という単語を教える時、性格の方の意味も一緒に教えた方がいいか」みたいな質問をしたことがあった。講師の回答は、「初級の学習者に初めて『冷たい』という単語を教える時には、性格の方の意味まで教える必要はない。教えると混乱する」みたいな感じだったと思う。やはり、最初は1対1対応で良い、最初から「語のイメージ」みたいな話をして一気にいろいろな意味を教えても混乱するだけでマイナス面が大きいということだと思う。「イメージ」は大事だけど、それはある程度学習が進んで様々な単語や文型が蓄積されてからの話で、まずは一つ一つ覚えていくことから始めるしかないということかな。