おとうさん。おはよう。

  きょうから、『葉月』。八月だよね。

  今は。過疎の町とか、なんとか。言われて、いるけれど。

  子どもの時は。この時期。海水浴客で、賑わって、いたんだよね。

   私たちの、町でも。ねえ、おとうさん。

   海水客相手の。旅館や、民宿も、たくさん、あったんだよね。

  「うちも。民宿、いうのを。してたことが。あるんじゃ。」

  「わしが。調理師の、免許をとって。」

  「夏は。田舎に、帰って。手伝っとったんじゃ。」

  「学校の、団体さんは。昼は、カレー。」

  「夜は、バラ寿司に。決まっとるけえ、ええけど。」

  「一般の、人は。そうは、いかん。」

  「わしが、大けな魚は。さばい、とったんじゃ。」って。

   言ってた、だけあって。

  おとうさんは。本当に。魚を、さばくのも。盛り付けるのも。

   とても、じょうず。だったよねえ。おとうさん。

  農業と、いっても。売れる物も、少ない。海の町に、とって。

   夏だけとは、いえ。現金収入が、得られる。

   民宿は。いい、仕事だったん、だよね。おとうさん。

  今の、人たちから。見れば。どう、見れるのか。分からないん、だけど。

   おとうさんは。

   「わしは。長男や。」って、思いが。強かったよね。

   受かっていたのに。高校に、行くこともなく。丁稚奉公に、行って。

   それから、働きずめで。うよ曲折。

  やっと。実家に。仕送りを、しなくても。よくなって、からだよね。

   もう、一回。自分の、やりたい勉強を。したのは。

  わたしと、一緒に、なったころは。

   やっと。取引先が、できた。

    そういう、時期。だったん、だよね。おとうさん。

  有難いことに。息子たちは。苦労知らずに。育ったん、だけどね。

   だから。おとうさんの、口癖は。

   「勉強し。なんでも、ええから。資格を、とれ。」

   「頭に、入っとるもんは。誰も、とっていかん。」

   「いつか、何んかの。役に、たつんじゃ。」いうてね。

   二人の、顔をみれば。いってたよねえ。おとうさんは。

  おとうさんの、偉い所は。

   息子たちに。言うだけで、なくて。

  「おとんは。ほんまに、努力家やった。」

  「なんでも。よう、勉強しとった。」って。

   今でも。息子たちに。言わせる、ところだよね。おとうさん。

  なんと、言っても。おとうさんは。息子たちにとって。

   『自慢の、おとん』なんだものね。  ねえ、おとうさん。