子を持って知る、なんとかっていうんだけど。

   「おかん、大変や。たいへんや。」いうて。

  子育てが始まって。やっと、親のありがたさに、気が付いたんだって。

   笑うでしょ。おとうさん。

  そういう私も。おとうさんが、いなくなって。はじめて、

   おとうさんの、有り難さに、気づかされれて、いるんだもの。

   息子のこと、笑えないよねえ。おとうさん。

  きのうも。ちょっと、甘いものでも、作ろうかと。始めたのは、いいんだけど。

   台所にある、あの量りで、はかろうとしたら。どうも、おかしいんだよね。

   もしやと、思って。電池を入れ替えたら。ちゃんと、なりましたよ。おとうさん。

  また。おとうさんに、助けられましたよね。おとうさん。

   引き出しの中に。ちゃんと、替えの電池を、入れていてくれて、いたんだものね。

   「おまえは。その時にならんと。・・・・」いうて。

   「困った、こまった。どうしよう。」って。

   さわいでいる、わたしを。横目でみながら。  

   「ほら。これを、使えって。」

  買い置きの物を、おとうさん、自分の机の、引き出しから。よく、だしてくれてたよね。

   そう、思って。見たら。やっぱり、ありましたよ。おとうさん。

  そういえば。車のキーの電池。あの時だってねえ。

   入退院の、最中だったのに。

   「おとうさん。カギ、使われへん。」いうたら。

   「電池買うて来い。」いうて。

  入れ替えて、くれたんだよね。そして。

   「もう、一本、あるじゃろう。」いうから。

   「こっちは。まだ、大丈夫つかえるよ。」いうたら、

   「ついでに。替えといた方がええ。」いうて。

   交換しといて、くれたんだよね。

  おかげで。片方のカギ。どっかに、置いてて。

   「さてさて、どこだっけ。」って。慌てなくて、すむんだよね。

   すぐには、困らないんだよ。もう一本、あるからね。おとうさん。

  今さらながらに。

   おとうさんの、ありがたさを。思い知らされているのは。息子だけでは、ありませんよ。

   私もですよ。    ねえ、おとうさん。