おとうさん。おはよう。

  今日は、二十四節季の、『大暑』だよ。暑い、はずだよねえ。

  スーパーに、行けば。ウナギ、ウナギという。はずだよねえ。おとさん。

   土用の丑の日が。もう、そこだものねえ。

  田舎にいた頃は。土用の丑の日は。

   ウナギを、食べるなんて。習慣。あったかしらねえ。

   なかった、ように。思うんだけどねえ、おとうさん。

   土用餅は、作ってたとは。思うんだけどね。

    『こしあん」を、つくってね。

  その。『こしあん』の、話で。もりあがったこと。あったよねえ。

  「うちは、なあ。時々、『さらしあん』いうて。」

  「大量に。『こしあん』の、元を。作っとったんじゃ。」

  「すり鉢、もってこい。言われて。」

  「うちで。一番大けな、すり鉢を。もって、いったら。」

  「釜で炊いた、ササゲを。そん中に、入れて。」

  「すれ、言われて。」

  「わしは。こまかった、じゃろう。」

  「そじゃけえ。すり鉢を。またに、はさんで。」

  「すりこ木で、すったんじゃ。」

  「それに、水を入れて。木綿の袋で、こすんじゃ。」

  「ボールの、中にのう。」

  「そしたら。袋んなかに、かすだけが、残って。」

  「ボールんなかに。水と、ササゲの身が。こされるんじゃ。」

  「ほっといたら。ボールんなかの、ササゲの身は。水んなかに、沈むけえ。」  

  「上澄みだけ、すてて。乾かすんじゃ。」

  「それを、とっといて。いる時に、つこうたんじゃ。」

  「『こしあん』が、いる時は。それで、作ったんじゃ。」

   いうてね。『さらしあん』の、話を。したことが、あったよねえ。

  土用餅は。『暑気」を、払うとか。言われてねえ。

   赤い豆は。邪鬼を、払とも。いわれるん、だけどね。

  だから、わたしも。作ろうとは、思うんだけど。この暑さ。

   『さらしあん』からでは。ちと、無理ですよ。おとうさん。

   この度は。『こしあんの、もと』を、買ってきて。

    手抜きで、作ることに。しますよね。おとうさん。

     味は、保証しますけどね。

       ねえ。おとうさん。