おとうさん。やっと、できましたよ。行水が。

  インコの『ぼた』は、怖がりで、ねえ。

   いままで、一度も。お水に、入らなかったのにねえ。

  この、暑さだもの。そう、思ってね。

   インコの『おはぎ』が、つかってた。あの、水入れに。

   水を、はって。あげたら、ねえ。

   ちょっと、だけだけど。口を、つけて。足を、つけてね。

   見ていたら、可愛いんだよね。きょうは。ここまで、終わり。

  まるで。長男を。プールに、通わせてた時に、そっくりでね。

   思い出して。笑って、しまいましたよ。おとうさん。

  おとうさんは。かなづち、だったから。

   息子たちは、泳げるようにって。プールに、通わせたのにね。

   長男は。まったく。水に、入らず。

   なんか月も。泳いでる、みんなの傍で。水遊びして、いたんだものね。

   「月謝が、もったいないと、思わんのん。」

   「おかあさん。」

   「いいかげん。やめさせたら、ええのに。」って。

    まわりの、人から。何度も、言われたものね。

   しびれを、切らしたのは。教えてくれてる、先生の方で。  

  ある日。息子を。プールの、真ん中に。投げ込んだん、だよね。

   そうしたら。犬かきでも、なんでも。

    やらないと。いけなかったん、だよね。

   顔つけは、いやだとか。なんとか。言ってる、場合じゃ。なくてね。

  あんなに。顔を。水に、つけるのを。嫌がって。

   プールの中に。入らな、かったのにね。

  あの、事件いらい。嘘のように。泳げるように。なったん、だよね。長男は。

  「『ぼた』は、なんで、水浴び、せんのんや」

  「いままでの、子は。みんな、水浴びしてたで。」って。

   息子たちは、言ってたけど。

  なんでも。ちょっとした。きっかけ、だよね。おとうさん。

   ほんの、ささいな。きっかけさえ、あれば。

   人であれ、鳥であれ。誰でもね。

   いままで。できないと、思っていた。ことが。

   さっと。できるように、なるんだよね。きっかけさえ、あればね。

  『ぼた』も、きょうの、足つけは。その、きっかけ。

   『ぼた』に、とっては。水浴びと、いう。大いなる、一歩への。

     ねえ。おとうさん。