おとうさん。おはよう。

  やっと、晴れましたよ。さあ、洗たくですよ。うれしいですねえ。

  「さあ。洗たくを。」と。思って。

   引き出しを、開けたらね。

  「これに。ちょっと、つけておいたら。もっと、白くなるで。」

  「湯あかを。落とすにはなあ。」って。

   おとうさんの、買ってきてた、もので。

   洗面台の、引き出しは。占領してますよ。いまでもね。

  お陰で。『さて、どうしようか。』と、思ったら。

   引き出しを、開けると。なんとか、なりますよ。

    ありがとね。おとうさん。

  そういえば。おとうさん。

   結婚当時。一から、十までとは。いかないまでも。

   一から、八までぐらいは。なんか。言われて、ましたよねえ。

  「これは。こうした方が、ええんやで。」

  「あれは。なあ。」ってね。

  何年も。一人暮らしで。

   自分の。暮らし、やすいように。やって、きてたんだから。

   何でも。おとうさん流って、ものが。あったんだよね。

  そこに。わたしが、やって来て。

   わたし流で。物事を、運ぼうと。するんだから。

  ことの、良し悪しは、別として。おとうさんから、見れば。

   わたしと、言う人は。なにから、なにまで。

    いまいち。だったん、だよね。おとうさんから、見れば。

  『なくて、七くせ』って、いうように。おとうさんに、だって。ねえ。

   わたしから、見れば。色々。あったん、ですよ。

    口には。出さな、かったけどね。

  でも。不思議なもので。いつの間にか。

   折り合いを、つけて。そんな、思いが。どっかに、いってしまってね。

  『うるさいなあ』って、思ってたことが。

  『有難いなあ』に、かわって。いったんだよね。

  これが。夫婦って、ものかも。知れませんよねえ。おとうさん。

   相手の。足りない部分を、言うんじゃなくて。補ってね。

  おとうさんが、仕入れた、豆知識も。ひけらかしたり、しないでね。

  「おまえ、なあ。」から。

   黙って。買ってきて、くれていた。洗剤の、ようにね。おとうさん。

  「わかってますよ。おとうさんに、いわれなくても。」って、

   わたしが、言わなくても。済むようにね。

  ほんと。こんな、つまらないような、ことなんだけど。

   そんな、中にも。わたしたち、二人の。夫婦の歩みは、あったんだよね。

     ねえ。おとうさん。