雨上がりの。合間をぬって。きょうは、散歩だよ。おとうさん。

  いつかの。老人施設の、前を通ったら。

   一人の、おばあちゃんが。イスに、座ってね。

    お菓子の、包み紙で。ツルを折って、いるんだよ。

   外から。わたしが、見ているのに。気が付いたんでね。

   思わず。微笑み、かけたらね。

    ニッコリ。照れ笑い、してるんだよ。おばあちゃんが。

  やっぱり。笑顔って、いいよねえ。おとうさん。

   幾つに、なっても。笑顔って、きれいだよね。

  今は。どうなんで、しょうかねえ。おとうさん。

   私たちの、子供の時は。クラスの、誰かが。入院したら。

   みんなで。折り鶴を、折ってね。病院に。届けて、いたよねえ。おとうさん。

   先生から、何枚ずつとか。色紙を、割り当てられでね。

    折ったのを。学校に、持っていくと。

    まとめて。つるす様、にして。届けて、くれて。いたんだよね。

  折り紙と言えば。おとうさん。あの。傘。

  わたしが、来たとき。おとうさんが。とだなの上に、かざっていた。

   むかし、はやっていた。タバコの箱で、作った。傘ですよ。

  近頃は。ちっとも。見かけなく。なったん、だけどね。

  「これ、どうしたん。作ったん。」いうたら。

  「近所の、ばあちゃんが、入院したときじゃ。」

  「一人暮らしじゃけ。見舞いに、いくもんも、おらんかったけえ。」

  「わしが、行って。やったんじゃ。」

  「その、ばあちゃん。器用な、ばあちゃんでなあ。」

  「にいちゃん。タバコの空き箱、あるか。いわれて。」

  「わしは。タバコは、吸わんけえ。」

  「事務所で。みんなから。もろうて来て、やったんじゃ。」

  「そしたら。おれいじゃ。言うて。これ、くれたんじゃ。」

  「これは。その、ばあちゃんからの。おれいの、気持ちじゃ。」いうて。

   おとうさん。いってたよねえ。

  きょう、出会った。施設の、おばあちゃんは。

   だれの、為に。折って、いたんで。しょうかねえ。

   あんな。いい笑顔、だったんだもの。

   だれかの。幸せを、願って。折っていたに。ちがいないん、だけどね。

     ねえ。おとうさん。