おとうさん。おはよう。

  きょうは。次男がくれた、ワカメが。沢山あるので。

   キュウリの酢の物を、作って。厚揚げの残りと、水菜の煮物。

   朝は、三分クッキング。手早くできました。

  お昼は。おとうさんも、好きだった。ワカメうどんに、しましょうかねえ。

  きょうは。一日、雨のようですから。

   台所に、あるもので。そう、思っていたら。

   ありましたよ。アズキの、残りがね。

  冬の間。ストーブで。今年は。よく、作りましたよね。『ぜんざい』を。

   あの。残りの、アズキですよ。おとうさん。

  「ぜんざい、作るんじゃったら。冷やしといて、くれんかのう。」って。

  夏に。ぜんざいを、作ると。バットに、冷やして。

   凍らせて、食べるのが。好きだったよねえ。おとうさんは。

  それで。思いだしたん、だけど。おとうさん。

   理科の、実験の時の話。あれですよ。

  「理科の、実験で。アイスキャンデーを。作った時が、あったじゃろう。」

  「試験管、一本ずつじゃで。いうて。」

  「試験管に、割りばし立て。」

  「先生が。好きなもんで、作ってもええ。いうたんじゃ。」  

  「みんな。砂糖水を、持ってきたんじゃ。」

  「わしは。その時。うちに、ぜんざいが、あったけえ。」

  「それを、持って、行ったんじゃ。」

  「せっかく、作るんじゃったら。うまい方が、ええけえのう。」

  「それが。間違いの、もとじゃった。」

  「みんなが、凍っとんのに。」

  「試験管から。割りばし、抜いたら。わしのんは。グサグサじゃった。」

  「まあ。シャーベットじゃのう。あれは。」

  「先生には。失敗じゃ。言われたけど。」

  「うまかったんじゃ。」って。

   言ってたよねえ。おとうさん。

  『失敗は成功の基』だとか、なんとか。いいますけどね。おとうさん。

  その時から、なんだよね。

  おとうさんが。ぜんざいを、凍らせて。食べるように、なったのは。

   「せっかく、作ったのに。」

   「夏でも。熱い方が、おいしいのに。」って。

   何度言っても。

   「夏は。これが、ええ。」いうてね。

  きょうは。時間も、あることだし。

   凍らせて、あげましょうか。ぜんざいを。

     ねえ。おとうさん。